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連載コラム カフェ・マニアックス
ようこそ。ここは、コーヒー・フリーク専用のカフェです。
カフェ飯とか、お菓子とか、ワインとかで癒されたい方は、ほかのコーナーへ、どうぞ。
抽出・焙煎のノウハウ、栽培、産地、科学、歴史、伝説、耳寄りな話、ちょっとおいしい話、うわさ話、こわい話etc.……、コーヒーのフルアイテムをとり揃えてマニアックに語ります。コーヒー好きの方なら、プロ・アマ問わず満足していただけると……。
コーヒーの生豆の見方(3)実践編
イエメン、エチオピアを例にとって

 2回にわたり生豆の基礎知識を説明してきましたが、実際に生豆をどのように判断し、評価し、どう焙煎につなげていくのかを解説してみます。取り上げるのはイエメンとエチオピア。ともにモカと呼ばれる、コーヒーの原点ともいえる生豆の生産国です。
 最も手強いというか、手に負えないコーヒーなのですが・・・・、勉強になるといえば、これらのコーヒーが一番でしょうか。


■イエメン、エチオピアのコーヒーの共通項
地図:イエメン
地図:エチオピア
 エチオピアの高原地帯はアラビカ種の原産地、イエメンの山岳地域はコーヒーの商業的栽培の始まった地と考えられていて、両方とも格別に由緒正しいコーヒーです。
 いずれもモカ××と称して売られていますが、コーヒーの代名詞ともなったイエメンの港モカから輸出されていたコーヒーは、当初はイエメンの山岳地帯で生産されたコーヒーであったことからも、狭義にはイエメンのコーヒーのみがモカと呼ばれるべきだろうと考えます。ただ、エチオピアはイエメンと狭い紅海を挟んで対岸に位置し、ヨーロッパの需要が増え始めた17世紀の終わりには、すでにエチオピア産のコーヒーもモカ港から輸出されるコーヒーに紛れ込んでいたようです。
 紛れ込んでも判別が難しいくらい、イエメンとエチオピアのコーヒーは味、香り、豆の外見ともに似ています。2つのコーヒーの共通の特徴を挙げておきましょう。

モカ香

イエメン、エチオピアのコーヒーのみが有する独特の香りです。ヨーロッパではワインフレーバーと表現されますが、少し違う、と感じながら的確な表現が見つかりません。

柔らかい酸味が特徴。深めに焙煎しても柔らかい口当たりの苦味になります。

外見

一部の水洗式のコーヒー(エチオピア)を除けば、粒(小粒のものが多い)と色が不揃いで、高級品でも欠点豆が多数混入し、一言で言えば貧相なコーヒーです。イエメンは丸めでショート・ベリー、エチオピア(特にハラー)は細長くロング・ベリーと呼ばれ、形に違いがありますが、最近は双方の典型的な特徴が薄れつつあります。


■イエメン、エチオピアのコーヒーのアウトライン
 「生豆の見方」のいくつかの視点にしたがって、それぞれのコーヒーの特徴を説明していきます。

栽培種

ともにアラビカ種のみ。

栽培品種

ともに長い間に自然状態で変異、交配を繰り返したため品種を特定することができにくいのか、通常は原種に近いとの説明にとどまっています。イエメンはモカ種との表記される場合も。

ショートベリー(左)とロングベリー(右)
ショートベリー(左)とロングベリー(右)

形状

ともに小粒の豆が多く、かつ不揃い。イエメンは丸めでショート・ベリー。エチオピア(特にハラー)は長形でロング・ベリーと呼ばれ、少し形の違いがありますが、最近は形も似てきています。

栽培地域

イエメン=マタリ(10%)、シャーキ(15%)、サナア(25%)、ホデイダ(50%)
エチオピア=ハラー(東部)、ジマ、カッファ(南西部)、シダモ(南部。イエルガチェフはシダモ地区)等。

*イエメン共和国はICO(国際コーヒー機構)に未加入のため、生産・輸出統計等 コーヒー関係の資料はあまり信用できません。

シダモ、ウォッシュト(左)とナチュラル(右)
シダモ、ウォッシュト(左)とナチュラル(右)

精製法

イエメン=ナチュラル(自然乾燥式)・コーヒーのみ
エチオピア=ナチュラル(85%。ハラー、カッファ、ジマ)とウォッシュト(水洗式。15%。シダモ、リム等。ただしナチュラルも残っている)。

格付

イエメン=格付けも信用できません。地域名による品質の評価はマタリ→シャーキ、サナア→ホデイダの順です。生産量が少ないにもかかわらず、出回っているのはほとんどマタリのみ。
エチオピア=欠点数によりグレード(G2〜G8)が決められます。輸出規格はナチュラルがG5以上、ウォッシュトはG2にランクされます。

価格

平均すればイエメンの方が圧倒的に高価。エチオピアの1,5〜2倍くらいの値段です。


モカ・マタリNo.9
モカ・マタリNo.9
アール・マッカ
アール・マッカ
サナア
サナア
ハラー
ハラー
カッファ
カッファ
シダモ
シダモ
イエルガチェフG1
イエルガチェフG1
■それぞれの生豆の紹介
<<イエメン>>

モカ・マタリbX

イエメンの首都サナアの南西、バニー・マタル地方の山岳地帯で産するコーヒー。古くからイエメン最高の産地とされる。bXが最高グレード。形・サイズも不揃いで、欠点豆も多い。発酵臭がでることもあるが、徹底してハンドピックすれば、取り除けることも多い。ただし、あまりハンドピックし過ぎるとモカ香も一緒になくなってしまう。

アール・マッカ

マタリの最高級品の一つとして流通している。イエメンの特徴的な短形の豆で、粒もかなり揃っていて、欠点豆も少ない。酸味も綺麗で味の濁りもなく、モカとしては扱い易い優れたコーヒー。ボディは強いが、なぜかモカ香は弱い。あまり徹底したハンドピックはしない方が良いかも。

サナア

少し枯れた(白みがかった)感じだが、外見はマタリとほぼ同じ。より不揃いで欠点豆が少し多い感じ。一般的には香り、ボディともマタリよりも劣るとされる。味は軽めでハンドピックして雑味を消せば、ブレンド用としては扱いやすいと思う。



<<エチオピア>>

ハラー

東部の高原地帯で産するコーヒー。かつてはエチオピア最良のコーヒー生産地とされた。ロング・ベリーと呼ばれる長形の豆が特徴で、このハラーにはかなり含まれている。普通、味はマタリに比べ多少軽めだが、ほとんど区別がつきにくい。このハラーはかなりハンドピックの必要な豆だった。

カッファ

「カフェ」の語源との説もある南西部のコーヒー生産地域。ジェマドロという農園のコーヒー。粒は比較的揃っていて、小粒でシダモに似た長方形の美味しそうな豆が多い。外見は今回のナチュラル・コーヒーとしては最良。ただし焙煎すると、想いのほか死豆が多く、ひどい発酵臭を呈した。

シダモ(ナチュラル):

日本の市場では、シダモ地域のコーヒーはウォッシュト・タイプが多いが、これは伝統的なナチュラル・コーヒー。ウォッシュトに比べれば、かなり欠点豆が多く、精製度は低い。もちろん豆の形状はウォッシュトに似ている。

イエルガチェフG1

シダモ地域でも、特に優良なコーヒー生産地区。ウォッシュト・タイプのみを生産。通常、エチオピアのコーヒーはG2が最高のランクだが、最近、イエルガチェフに限りG1が設定された。小粒だが形も揃い、透明感のある美しい緑色のコーヒー。欠点豆はほとんど見当たらない。モカ・フレーバーが際立ち、美しい酸味と適度なボディをもつ。世界的に見ても最良のコーヒーの一つと思う。


 このように、おおかたのイエメン、エチオピアのコーヒーは、大きさ、乾燥度、形状と もに不揃いで欠点豆も多いため、ハンドピック→焙煎の過程でも非常に手間がかかります。
 次回は、イエメン、エチオピアの具体的なハンドピックと焙煎の方法を提案します。



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