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連載コラム 半歩プロの西洋料理
「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ!
フランスパンは世界を挟む?
薄暮のリヨン旧市街大通り。ビストロが並びます

薄暮のリヨン旧市街大通り。ビストロが並びます

  「!」軽い揺れによって目覚めた私の視線に入ったのはボンネットから大きく弾んで転がって行く薄汚れたサッカーボールであった。午後の日差しに晒されたシートでウトウトとしていた私は体育館前の大きな駐車場を走り抜けて行くサッカー小僧の後ろ姿を見送りながら、床に落した文庫本を拾い上げて時計に目を移した。3時まで15分足らずしかない、たっぷりと1時間は寝ていた事になる。助手席においてあったサンドイッチを手に取り、日差しの中でぬるくなったバドワと共に少し遅い昼食を取る事にした。今日は買い物の後でリヨンの旧市街にあるビストロ街での昼食を予定していたのだが、途中からの便乗者の1人がどうしても1時半までに帰らないと行けないと言い出したので、食事を予定していたリヨン旧市街のビストロ通りにあるタイ料理レストラン「チェンマイフラワー」でお土産として作ってくれるサンドイッチを買い込んで来たのであった。

壁に大きく描かれただまし絵。手前の椅子はアイスクリームショップのもの

壁に大きく描かれただまし絵。
手前の椅子はアイスクリームショップのもの

  朝早くに宿舎を車で出て、途中で2人をピックアップしてリヨンへ買い物に…、白衣屋へ行って新しいサボーを注文した後、フナックで本を物色し、メインの買い物コースである中華街へと足を運んだ。その道すがら1人が件のタイムリミットを言い出したのであった。予定のコースを逆周りし、まだ準備をしているビストロ街を通り抜けると「チェンマイフラワー」には既に客が座っていた。気さくなマダムに前回来た時にも頼んだお土産用のサンドイッチを作っておいてくれるように頼んで通りを抜け、大きなだまし絵が描かれた建物の横のアイスクリームショップで詫び賃のアイスクリームをおごらせた。いつ来てもシャッターの下りている雑貨屋の横を抜け、路地をまわるとお目当てのスーパーの大きなガラス窓が見えた。中に入ると所狭しと野菜や漬け物が並びその隣には肉、魚、冷凍食品、お惣菜コーナーの角を曲がると乾物コーナーになる。頼まれている醤油と米、夜食用のインスタントラーメンを1ケース、春雨、すし海苔…様々な食品を買い込んで車に積み込んだところで12時をまわったのであった。帰りたいと言い出した男はお惣菜を数品とキムチを買い込んでいた。多分、断れない相手から昼食のおかずを買ってくるように命じられたのだろう。まったく迷惑な話であった。

リヨン旧市街大通りにあるタイ料理店

リヨン旧市街大通りにあるタイ料理店

 「チェンマイフラワー」で豚の角煮や蒸し鶏、ハム、ゆで卵と野菜のピクルスがたっぷりと詰まったサンドイッチを受け取り、彼らの下宿で2人をおろしてヴィルフランシュの街に帰ってきたのは1時を少しまわったところであった。本来は帰り際に現像に出してある写真をもらいに行く予定であったが、出来上がり予定時間の2時までまだ時間があったので、体育館の駐車場に車を止めて文庫本を手にして読み始めたところで意識が途切れていたのであった。この場所に車を止めてサンドイッチを食べるのは土曜の日課のようになっていたが、この場所でこのサンドイッチを食べるのは始めてであった。タイ料理を挟んだ適当な賄い食か、フランスで生まれた食べ物だと思っていたこのサンドイッチが実はバインミー(ベトナム語でパンの意)と呼ばれるもので、かつてフランスの支配を受けていたベトナムではポピュラーな軽食であることを知ったのは、店を紹介してくれた知人が帰国直前に「あの店のオーナー夫婦はベトナム人ですよ」と教えてくれた時の事であった。

   休日にここで一番たくさん食べたのはピタパンのサンドイッチ「ケバブサンド」である。駐車場と路地を隔てて向かい合った一角には香ばしく食欲をそそる香りと共にドネルケバブがグルグルとまわる一軒のスタンドがあった。
ドネルケバブのロースターで焼かれていた鯖はこんな感じでした

ドネルケバブのロースターで
焼かれていた鯖は
こんな感じでした

そこでは野菜と共にドネルケバブをたっぷりとピタパンに挟んだケバブサンドの他にひよこ豆で作ったコロッケ状のファラフェルを挟んだものやひよこ豆をペーストにしたフムスを挟んだものが売られていた。一度、件のサッカー小僧の昼ご飯のサンドイッチと買ったばかりのケバブサンドを交換した事があった。スペイン系のフランス人である彼はサンドイッチの事を「ボカディージョ」と呼んでいた。私の知っているボカディージョはバゲットに切り込みを入れて、スペイン風オムレツのトルティージャやいかやえび、小魚のミックスフライを挟んでにんにくの効いたアリオリをたっぷりとかけたものであった。彼のお弁当は、バゲットに大きな切り込みを入れ、たっぷりのオリーブ油とトマトのピュルプ(裏漉した生のトマト)が塗り付けられたもので、申し訳程度に刻んだオリーブが挟まれているだけであった。「スペインで食べられているパンコントマテみたいだね」と聞いてみると「カタルーニャのボカディージョ」だと教えてくれて、本当はトマトとオリーブ油を塗った後に生ハムやチョリソをたっぷりと挟むのだが、今日は遊ぶ時間が惜しくて作りかけのものを持ってきたのだと説明してくれた

何を切るのか?どう使うのか?まったくわからないアラブの包丁・・・大きさは中華包丁ぐらい

何を切るのか?どう使うのか?
まったくわからないアラブの包丁・・・
大きさは中華包丁ぐらい

  この場所ではもう一つ、ぶつ切りの玉ねぎとトマト、更に焼いた鯖をバゲットで挟んだサンドイッチに出会った。それはいつもとは違う日曜の昼下がりであった。遅くまで寝ていて、朝市に来ても目に付くものが無くて帰ろうとしていた所、何故かいつも日曜日には閉まっているケバブ屋に人が集まって何かを焼いていたのだ。近付いてみると鯖を丸ごと炙り焼いていて、それをほぐして野菜と共にバゲットに挟んでいたのである。トルコの漁師は陸に上がると港内で魚を勝手に売ることが出来ないので、船の上で魚を焼いてパンに挟んで港の中にいる労働者に売って現金を稼いだ時代があったそうで、一昔前まではトルコの港の風物詩でもあったらしい。いつもと違う時間に訪れた私は、たまたまやっていたこのお祭り騒ぎに遭遇したのであった。以前、音楽カセットとアラブの庖丁を物々交換した若者が手招きしたので、紛れ込んで焼き鯖のサンドイッチを頂いてしまった。ぶつ切りの玉ねぎが少しつらいものではあったが、バゲットと鯖の塩焼きの思わぬ出会いに不思議な魅力を感じ、帰国後も何度か試してみた。国際都市でもない小さなヴィルフランシュの街、体育館前の駐車場で西洋と東洋そして中東のバゲット・サンドに出会ったのは、大袈裟に言えばフランスが美食の国であるからこその出来事なのだろうか?フランスの街角を人々の手の中で闊歩するフランスパンは世界を包み込む力を持つ食べ物なのかも知れない。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ カタルーニャ風サンドイッチ
レシピ トルコ風サンドイッチ
レシピ ベトナム風サンドイッチ

*サンドイッチにあう軽いアルコールドリンク

レシピ ヴァン・ショー
レシピ ストロベリー・ワインクーラー

老人ライダー候補生
人物 此上 潤
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