辻調グループ

コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
辻調グループ 最新情報はこちらから
Column&Recipe
コラム&レシピTOP
西洋料理
日本料理
中国料理
世界の料理
洋菓子
和菓子
パンとドリンク
日欧食べ物だより
こだわりレシピ検索
西洋料理TOPへ半歩プロの西洋料理 コラム一覧へ
連載コラム 半歩プロの西洋料理
「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ!
探究「西洋料理に日本料理食材を使ってみたら…?」その2
   前回に引き続き、今回も株式会社「いとふ」さんにご協力頂き、「麩」のお話です。
   前回は、日本における麩の歴史と麩の材料についての説明が中心でしたが、今回は実際の麩の製造工程を、写真でご紹介したいと思います。


  {前回のコラムをお読みにならなかった方のために}
   株式会社「いとふ」は、京都の老舗の麩屋(江戸期創業)で修業された伊藤禎雄社長が、 1956年に創業された会社で、生麩、焼き麩の製造・販売を行っておられます。http://www.itofu.jp/


「いとふ」のびわこ工場

「いとふ」のびわこ工場

   見学させていただいたのは、滋賀県大津市際川にある「びわこ工場」です。なかなか目立つ配色の建物ですが、これは害虫が近寄らないための工夫だそうです。琵琶湖では虫が大量発生することがあり、その対策としてこのような配色となったそうです。会社では衛生面には大変注意を払っておられ、製造スペースの入口にはエアーシャワーなどの設備もあり、私も念入り(?)に汚れを落としてから、見学をさせていただきました。

生麩の製造工程
   工程の流れは、生地作り⇒練りこみ⇒分割⇒下ゆで⇒型入れ⇒本ゆで⇒型抜き⇒冷却、と進みます。
   ご覧いただくのは、お正月用の「梅麩」の工程です。

右:グルテンともち粉をミキサーで混ぜたもの。左:右の生地を練り機で練りこんだもの。練りこむことで均質になり、コシを出し、空気を抜く。

右:グルテンともち粉をミキサーで混ぜたもの
左:右の生地を練り機で練りこんだもの。練りこむことで均質になり、コシを出し、空気を抜く

1. 生地作りと、練りこみ。
   生地作りは、グルテンの状態の把握から始まります。グルテンのコシの変化を読み、生麩はもち粉を加えます。そして、それをさらに練りこんでベースの生地が出来上がります。また製品によっては、生地に着色をします。


2. 「梅麩」用に着色された12枚の生地を、花のグラデーションを考えて重ねていく。
   12枚全てに着色をするわけではありません。組み合わせた時の配色を考え、12枚それぞれに幅や厚みの変化を持たせて組んでいきます。

 

3. 色の広がりを調整しながら、伸ばす。
   2人がかりで生地に丸みをつけながら、本物の梅の配色に近づけていきます。

 

自ら作業を行う伊藤社長

自ら作業を行う伊藤社長

4. 直径3cmほどに伸ばし、約20cmの長さに分割する。
   分割されたものは、次々と下ゆでされていきます。


左:生の生地。中:下ゆでしたもの。右:型に入れて本ゆでしたもの。

左:生の生地
中:下ゆでしたもの
右:型に入れて本ゆでしたもの

5. 下ゆでして冷水に落とした後、型に入れて本ゆでを行う。
   下ゆですることで、型への付着と、本ゆで時の過度な膨張を防ぐことが出来、また、冷却時の縮みが小さくなり、きれいな形に仕上がります。
   *型入れは、企業秘密の部分があり、撮影できませんでした。


出来上がった梅麩をカットしたもの

出来上がった梅麩を
カットしたもの

6. 出来上がり。



焼き麩の製造工程
   工程の流れは、生地作り⇒練りこみ⇒焼き上げ⇒乾燥⇒成形(カット)、と進みます。
   ご覧いただくのは、「すき焼き麩」の工程です。

生地を分割する機械に乗りやすい大きさに成形する

生地を分割する機械に乗りやすい大きさに成形する

 
1. 生地作りと、練りこみ。
   焼き麩はグルテンに小麦粉を加えます。それを練りこんでベースの生地が出来上がります。この後、焼き釜に手で引き伸ばしながら生地を置いていくために、機械で分割しておきます。


2. 焼き釜に生地を並べる。
   生地の状態や気候によって、釜の温度調節が行われます。


3. 生地の膨らみを助けるため、じょうろで水をまき、蒸気を発生させる。
   作業する日の湿度や焼き釜の温度によって、水の量が調節されます。


4. 焼き上げて、自然冷却し、乾燥させる。
   焼きたてのフランスパンのように、香ばしい匂いがあたりに立ち上ります。

焼き上がり   乾燥させる

焼き上がり

 

乾燥させる


5. 機械で成形(カット)し、すき焼き麩の出来上がり。
   この後、袋詰めして、販売されます。

機械で成形(カット)する。   すき焼き麩の出来上り。


<あとがき>
   コラム2回分の料理を考えるために、これまでの人生で食べたのと同じ、もしくは、それ以上の量の“焼き麩”と“生麩”を食べたような気がする(“焼き麩”を前回食べたのはいつだったろうか?)。
   子供の頃、焼き麩と言えば(失礼な話だが)「鯉の餌」のように思っていた。しかし、今回あらためて、その美味しさを感じることが出来た。それは、単に私が齢を重ねたためだけではないように思っている。
   作り手が情熱をかたむけて作った“料理”が、食べ手に何かを訴えかけてくるように、“食材”もまた、私に何かを訴えてくる。そんな“食材”にこれからもチャレンジしていきたいと考えている。

   「株式会社 いとふ」では、近江産の小麦粉を使った“焼き麩”の生産を試みているそうだ。まさに、「地産地消」の試みである。本校の中国料理担当者に聞いたところ、中国には日本の“焼き麩”に当たるものはないらしい。日本料理のために生まれた食材。それが“焼き麩”なのである。
   “食育”が叫ばれている今の時代、大人である私たちが、もっと身近な日本料理食材を食する必要があるとさえ、考えさせられた取材行でもあった。
   試作の結果、思うように“焼き麩”を使った西洋料理が出来なかったことを以上のように締めくくり、今回のコラムを終わりたいと思う。お世話になった「株式会社 いとふ」の皆様には厚く御礼を申し上げると共に、2回に渡りお読み頂いた方々にも御礼を申し上げたい。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ 生麩とチーズのベーニェ
レシピ さくらんぼのクラ麩ティ

近江の守護代
人物 木幡久也
このページのTOPへ
 
辻調グループ校 Copyright(C) 2003 TSUJI Group