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【とっておきのヨーロッパだより】隣国イギリス、優雅な午後のひと時
2019年01月11日

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<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>


イギリスは、私が今暮らしているフランスの隣に位置する国です。ですが、これまであまり訪れる機会を持たずにきました。特にイギリス料理については、正直なところあまり良いイメージを持てずにいました・・・食材を茹でるだけの調理法や、フィッシュ&チップスのようなジャンクフードなど、自身が専門としているフランス料理に比べて大雑把なものという印象を持っていたからです。そんな私でしたが、このたび機会を得てイギリスへ行くことに。そこで初めて、「イングリッシュブレックファスト」、「ローストビーフ」など独自の味わいを持つ伝統料理や、多くの植民地を擁した歴史から多彩な国の料理を受け入れて築かれた食文化に触れ、イギリスの食について新たな魅力を感じ取ることができました。

「とっておきのヨーロッパだより」のテーマでは、まだイギリスについて多くは紹介されておらず、本当はあれもこれも書きたいのですが、今回はアフタヌーンティーについて紹介することにします。


アフタヌーンティーは、イギリス発祥の午後のティータイムのことで、15時過ぎから行うものがよく知られています。紅茶を飲むことが主体ですが、軽食として、サンドウィッチ、スコーン、ケーキなどが添えられます。
その始まりは、19世紀のヴィクトリア時代。7代目ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアによって考案されました。当時の貴族の生活スタイルとして、正式な食事は1日2回。朝はお昼近くまで寝て、遅めの朝食をとった後、ディナーを20時頃にとるのが一般的でした。食間があまりにも長時間だったため、アンナ・マリアは午後にティータイムを取っていたのですが、それを貴婦人達の集まりに使えないだろうかと考えたのが始まりだそうです。郵便システムがなかった時代には、招待する家の執事が馬車に乗り、招待客の家まで出向き、直接招待状を渡していたそうです。やがて貴族達だけの楽しみが、中級層、庶民に広がっていくようになりました。

イギリス・ロンドンの高級ホテルのサロンでは、必ずといっていいほどアフタヌーンティーの提供スペースが設けられています。エントランスを入りすぐのサロン、あるいは景色のいい階上に設けられているところもあります。その多くは高級感があり、提供される食器などにこだわりがあり、優雅な午後のひと時を過ごすことができます。それ以外にも、スタンダードスタイルとは異なった形で提供されるアフタヌーンティーもあります。ロンドン名物の2階立てバスに乗っていると、向こう側に「Afternoon tea」と塗装されたバスに出会いました。


ロンドン市内を走るアフタヌーンティーが楽しめる赤い2階建てバス


観光がてら車内でアフタヌーンティーをいただけるという1つで2度おいしいプランがあって、思わず乗ってみたくなりましたが、予約制だそうで、このときは残念ながら見送ることに。アイシングクッキー屋のアフタヌーンティー、店内がアートで飾られて提供されるケーキはポップなスタイルなど、正統派のものから新しいスタイルと様々です。

沢山ありすぎて、どこに行ったらいいのか...。アフタヌーンティーが楽しめる店を紹介するガイドブックに、現地で出会いました。


今回は、ロンドンでも指折りの高級ホテル内にある3軒の有名店で、アフタヌーンティーを体験してきました。


コナ KONA


セント・ジェームス・コート ア・タージホテルST. JAMES' COURT, A TAJ HOTELの別棟にあるレストランで、「不思議の国のアリス」をモチーフにしたアフタヌーンティーが供されることで有名です。

ザ・ゴーリング The Goring


2011年のロイヤルウエディングの際にキャサリン妃が宿泊したといわれる、バッキンガム宮殿の裏手にあるゴーリングホテル内のティーサロン。

テムズ・フォワイエ Thames Foyer


映画などにも高級ホテルの代名詞としてよく登場する、創業129年の老舗ホテル・サヴォイ内にあるティールーム。



3つのお店それぞれで趣向を凝らしたアフタヌーンティーを体験しましたが、提供や喫食の手順には、確立した共通の作法があると感じました。それをいったん心得てしまえば、戸惑うことなく楽しむことができます。以下、3店舗での写真と共に、アフタヌーンティーの流れをご紹介しましょう。
ほとんどの店でアフタヌーンティーは予約制で、人気店はすぐに予約で埋まってしまいます。予約の際に、「ドレスコード(スマートカジュアル)」を告げられます。あまりラフな格好は駄目なようで、急な予定ではなく、お洒落をして楽しむ時間といったところです。


店内に入ると、ゆったりとした席に案内され、メニューを渡されます。アフタヌーンティーのメニューには、ベーシックタイプのもの、その店独自のスペシャルなもの、また時間帯によっては「ハイティー」のメニューもあります。ハイティーとはアフタヌーンティーよりも遅い時間帯として、19時からの観劇前に腹ごしらえをするためのもので、通常のメニューにちょっとした料理一皿が提供されるのが特徴です。


メニューを注文するのと同時に、紅茶の注文をします。紅茶の種類だけでたくさんあり、どれを選んでいいのか迷ってしまいますが、紅茶を飲むことがアフタヌーンティーの醍醐味なので思い切って楽しみましょう。自分の好みの紅茶でも、ホテル独自のブレンドでも、この後に出てくる食べ物の邪魔はしないように考えられています。紅茶は大きなポットに入れられて、目の前でサーブしてくれます。その後なくなればすぐに注ぎに来てくれて、紅茶のサービスはエンドレスです。


お茶を切らすことがないように...徹底されたお茶のサーブ


なお、アフタヌーンティーではシャンパンを注文することもできます。私が訪れた日の客席では、誕生日会と思わせる集まりがあり、シャンパンで乾杯をしていらっしゃいました。お祝いとなればやはりシャンパンを合わせるのが良いですね。
また、総じてアフタヌーンティーには女性客が多い印象を受けました。私が訪れた3店でも「女子会」と思われるグループをあちこちで見かけました。お客の中にはカップルなどもいらっしゃるのですが、どちらかというと男性が女性側に誘われて...という雰囲気で、貴婦人の集まりはここでも引き継がれているようでした。


いよいよフード。アフタヌーンティーの成立初期には、食べ物類は1皿ずつ食卓へ運ばれていたそうですが、最近のベーシックなものは、アフタヌーンティーと聞けば必ずイメージできる3段のスタンドで提供されます。



1段目はサンドウィッチ、2段目スコーン、3段目ケーキです。この順番で食べることになるのですが、なぜ3段なのかというと、テーブルのスペースを効率よく使用するためです。紅茶のポットを人数分、1つのテーブルに置くのですが、テーブルの上が食器でたくさんになっても、落としてしまわないようにという配慮が見られます。ここで使われる食器なども、元々は貴族達の持ち物自慢からきたようです。

各店のフード

KONA The Goring Thames Foyer
サンドウィッチ


食べる順番は、最初にサンドウィッチ。きゅうりを使用したものは格式高いアフタヌーンティーには欠かせないものです。ヴィクトリア時代、きゅうりはとても貴重な食べ物で、貴族たちがこぞって庭に農園を作り、そこで育てていた名残だそうです。日本人の感覚だと、きゅうり以外の材料を入れ忘れたのかと思ってしまいますが、それこそがステイタスだったのですね。今回私が食べたものは、きゅうりだけのサンドウィッチ以外にも、鶏肉のカレー風味とツナのマヨネーズあえ、スモークサーモンとクリームチーズなど具材が何種類もあり、それに合わせてパンの中にはにんじんやオリーブなどの野菜や、クミンなどのスパイスが練りこまれているものもあり、多様化していました。


KONA The Goring Thames Foyer
スコーン 


次にスコーン。お菓子屋やパン屋で売られているものと比べ、小さいサイズです。定番はプレーンとレーズン入りのもの。チョコチップを入れるなどアレンジをしているホテルもありました。温かくしてサービスされるので、サンドウィッチを食べている間に、冷めないようにナフキンで包んできてくれます。横に添えられるのは、様々なフレーバーのジャムと濃厚なクロテッドクリーム。クロテッドクリームは、イギリスで古くから食べられている、脂肪分が高い、生クリームとバターの中間のようなものです。スコーンを半分にしてジャムを載せてからクリームを塗ると、クリームが溶けずにすむので、まずはジャムから塗るといいそうですが、クリームが先などこだわりの論争はあるそうです。


横半分に手で分けて、ジャム、クリームを塗ります




KONA The Goring Thames Foyer
ケーキ 



最後はケーキ。レモンのタルト、チョコレートケーキなど、各店の特色がある色とりどりのケーキが登場します。

 
アリスがテーマの「コナ」では、Drink Meと書かれた可愛いいちご風味のヨーグルトドリンクが


たくさん出てくるので、もう食べられないと思ってしまうのですが、そもそもアフタヌーンティーは、「食べきれない量を出すもの」という暗黙の了解があるとか。「足りなかった」「それだけしか用意してくれなかった」と食べ手に思わせないよう、多めのフードを用意するのが伝統なのだそうです。でもご心配なさらずに。現在ではドギーバッグの用意があるホテルがほとんどです。そのバッグがかわいらしい。おうちに帰って一息ついた後、もう一度素敵なティータイムを過ごせるのではないでしょうか。


ドギーバックにもかわいらしいイラストが入っています

最後にフランスでアフタヌーンティーをやっているところはないかと調べたところ、パリのホテルでも何軒かありました。そのうちの1軒、ル・ロワイヤル・モンソー-ラッフルズ・パリLe Royal Monceau-Raffles Parisの中のカフェ「ル・バー・ロンLe Bar long」に行ってきました。こちらでは、アフタヌーンティーは15時から提供されています。
3段プレートは長方形のもので、段の置く順番は違うものの、サンドウィッチは小さなプティ・サレ(手で取って食べる、フランス料理で食前酒と飲みながら食べるおつまみのようなもの)に形を変え、スコーンはとうもろこしの粉が入っていてイギリスのものとは一味違ったアレンジが加わり、ケーキはピエール・エルメ製のもの。フランス菓子のよさが引き立っていました。


3段プレートは細長い長方形のものでスタイリッシュ


本家のイギリス、そしてフランスでのアフタヌーンティー体験を紹介してきましたが、どこも共通しているのは、アフタヌーンティーは、時間を気にせず、たわいもない話しをしながら、午後のゆっくりとした時間を心地良く過ごせるひと時ということでした。Have a good tea time!

このコラムの担当者

高橋晶子

高橋 晶子 TAKAHASHI AKIKO

■現職(肩書き)
辻調グループ 西洋料理担当

■出身校
辻調グループ フランス校

■卒業年度
1992年

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