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【独逸見聞録】ブレートヒェンの異名と形状 ~小型パン(其の弐)~
2012年10月12日

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<【独逸見聞録】ってどんなコラム?>

 

大型パンを表す単語は、ドイツ国内は勿論、ドイツ語圏で「ブロート(Brot)」にほぼ統一されている。

但し小型パンを示す単語は、標準語、または書き言葉では、「Brot」に縮小語尾の「-chen」を付けた「Brötchen」が使用されるが、各地方によって、それぞれの異なる名称がある。

今回は、「ブレートヒェン(Brötchen)」の異名と、形状や成形方法について紹介する。

 

★クラインゲベック(Kleingebäck)とブレートヒェン(Brötchen)

大型のブロート(Brot)よりも小さなものを「クラインゲベック(Kleingebäck)」と呼び、個々の焼き上げ重量は250g以下である。

「ブレートヒェン(Brötchen)」は、クラインゲベックの中でも小さめのパンで、主に食卓パンとして用いられる。1957年以降、その重量についての制約は解かれているが、一般的に40~60gが主流である。

因みに、隣国オーストリアでは、ブレートヒェンの同義語に相当する「ゼンメル(Semmel)」の最低重量は46g以上と決められており、それより小さなものは「ジュァゲベック(Jour-Gebäck)」の名称で区別されている。これについては、「オーストリア食品便覧(Österreichisches Lebensmittelbuch:エーステライヒシュ・レーベンスミッテルブッフ)」に収録されている。

 

★地方によって異なる名称

「ブレートヒェン」という単語は、小型の食卓パンの総称である。書き言葉としては、ドイツ国内であれば一応全土で通用するが、それぞれの地方に、多くの“同義語”や“同類語”が存在する。

 

標準語でもある「ブレートヒェン(Brötchen)」の使用率が圧倒的に高いのは、ドイツ北部である。

南部を中心に、特にフランスやスイス、オーストリアの国境付近で、様々な名称が使用されている。

ドイツ南西部では、「ヴェック(Weck)」や「ヴェッケ(Wecke)」、「ヴェッケン(Wecken)」が用いられるが、「ヴェックレ(Weckle)」や「ヴェックラ(Weckla)」など、南部の別の地域にも、語尾変化したと思われる“類似語”が多く存在する。

バイエルン州北部のフランケン地方には、「キップフ(Kipf)」やその語尾変化した(Kipfl/Kipfla/Kipfle)、「ラーブラ(Laabla)」、「ライプライン(Laiblein)」など、何故か他の地域とは系列の異なる単語が多い。

 

ドイツ南部(特にバイエルン地方)や隣国のオーストリアでは、「ゼンメル(Semmel)」が幅を利かせるが、同時に「ヴェッケァル(Weckerl)」も用いられる。スイスでは「ヴェッゲン(Weggen)」や「ヴェッグリ(Weggli)」の他、「ムッチュリ(Mutschli)」などが使用される。

 

これに対して、ハンブルク周辺の「ルントシュトゥック(Rundstück)」やベルリンの「シュリッペ(Schrippe)」、ザクセン地方やブランデンブルクの「クニュッペル(Knüppel)」は、ある一定の形を持つ小型パンに限って使用される。

「ルントシュトゥック」は、丸または短い楕円形。「シュリッペ」は、両端の細くなった紡錘形で、表皮に縦長の切り込み、または割れ目がある。「クニュッペル」にも同様の割れ目があるが、全体に均等な幅を保っていて、両端は尖っていない。

 

★成形による外観の相違と名称

同じ配合でも、その形によって、パンの外皮(Kruste:クルステ)や内層(Krume:クルーメ)の比率が違うと、味や香りも変化する。型押ししたり、切り込みを入れたり、薄く伸ばして巻き込んだり、編み込んだりすることによって、表皮に「アウスブント(Ausbund)」と呼ばれる割れ目模様が形成される。香ばしい外皮の占める割合が高くなる程、風味も増す。

 

小麦粉の割合が90%以上の「ヴァイツェンブレートヒェン(Weizenbrötchen)」は、様々な形にすることが可能である。成形の作業は、適度な中間発酵(Zwischengare:ツヴィシェンガーレ)を取って、生地を休ませながら行う。

 

☆丸い小型パン

◆ルントブレートヒェン(Rundbrötchen)

滑らかに丸められた生地玉は、手を加えずに、充分な発酵の後オーブンに入れられる。

製造工程の一番単純な小型パンで、外皮部分が少ない。またこの表皮は薄く、剥がれ易い。

 

ルントブレートヒェン

「分割・丸め機」で丸められた生地。

 

◆ローゼンブレートヒェン(Rosenbrötchen)

開きかけたバラ(Rose:ローゼ)の花を想わせる外観の小型パン。

分割・丸め機の専用プレートの窪みに、植物性の油を薄く塗り、伸ばした生地を乗せる。回転数を減らして軽く丸め、とじ目を下にして発酵させる。窯入れ前に裏返してとじ目を上に(滑らかな面を下に)する。焼成の際に、とじ目の部分が割れて、力強く弾ける。

 

☆押し型で模様を刻んだ小型パン

中間発酵後、軽く粉を付けた丸い生地玉の表面に、専用の押し型で模様を深く刻み込む(生地玉の底の部分まで深く押し付ける)。型押しした面を下にして発酵させ、焼成前に裏返す。

この押し型は、「シュテュプフラー(Stüpfler)」と呼ばれる。

 

◆カイザーゼンメルン(Kaisersemmeln)

ドイツ南部やオーストリアでは、一番馴染みの深い小麦粉製の小型パンである。

発祥の地はオーストリアで、ウィーンの「カイザー(Kayser)」という名のパン職人が考案したという説の他、皇帝ヨセフ2世(Kaiser JosephⅡ)の統治下、パンの重量や価格に関する法令に対して抗議行動を取った製パン職人組合の功績であるなど、諸説あるが真相は究明されていない。

5本の反った刻み目の入った、小型パンの表面の模様は、「王冠(Krone:クローネ)」を連想させる。元々は、一つ一つ手で折り込んでこの刻み目を成形していた。現在では、殆どのパン屋が専用の押し型を使用している。

手成形をしているのは極僅かで、「ハントゼンメル(Handsemmel)」または「ヴィーナー・カイザーゼンメル(Wiener Kaisersemmel)」と呼ばれ、珍重されている。この名称を名乗るには、製造工程や使用可能な材料など、規定に沿っていなければならない。生地の分割重量は、約56gである。

 

カイザーゼンメルの押し型 カイザーゼンメルの押し型

カイザーゼンメルの押し型

 

◆シュテルンブレートヒェン(Sternbrötchen)

中間発酵後、軽く粉を付けた丸い生地玉の表面に、「十字」の溝を深く刻み込むので、表面が四等分される。この「星(Stern:シュテルン)」模様を付けるは、焼成前にナイフで表面に十字の切り込みを入れる方法もある。

 

◆ゼーザムブレートヒェン(Sesambrötchen)とモーンブレートヒェン(Mohnbrötchen)

型押しした面を水で湿らせ、白ゴマ(Sesam:ゼーザム)や黒ケシ(Mohn:モーン)などをまぶし、トッピングの面を下にして発酵させる。

 

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◆ザルツブレートヒェン(Salzbrötchen)

型押し、または手成形で模様を付けた面を下にして発酵させ、焼成前に裏返す。表面を水で湿らせ、少量のキャラウェイの実(Kümmel:キュンメル)と混ぜ合わせた粗い粒状の塩(Brezelsalz:ブレーツェルザルツ)を、適当な分量振り掛ける。

 

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写真左:左は金属製の押し型を使用。右は手成形。

写真右:型押しした面を下に向けて発酵させる。

 

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金属製の押し型

 

☆内側に折り返した、または切り込みを入れた小型パン

◆シュリッペン(Schrippen)

生地玉のとじ目に軽く粉を付け、平らにして手で内側に折り込み、転がして縦長に伸ばす。両端を少し尖らせ、紡錘形に整える。とじ目を下にして発酵させ、焼成前に裏返す。窯伸びの際に、とじ目部分が力強く開く。

紡錘形に成形して発酵させ、焼成前に、表面に縦長に切り込みを入れる方法もある。

 

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成形直後のとじ目の状態。発酵の際にはとじ目を下に向ける。


切り込みを入れた場合は、「シュニットブレートヒェン(Schnittbrötchen)」、またその両端の尖った形から、「シュピッツブレートヒェン(Spitzbrötchen)」とも呼ばれる。

 

◆クニュッペル(Knüppel)

シュリッペと同様に、生地玉を手で内側に折り込み、転がして縦長に伸ばす。とじ目を下にして発酵させ、焼成前に裏返す。クニュッペルは均等な幅を持ち、シュリッペの様に、両端は尖っていない。

 

☆複数の生地が繋がった小型パン

◆ドッペルテ・ブレートヒェン(Doppelte Brötchen)

「ドッペルブレートヒェン(Doppelbrötchen)」とも呼ばれる。

生地玉を丸めた後、2個ずつ繋げて並べる。中間発酵後に、専用の押し型か麺棒で、縦中央を押さえて溝を付ける。

発酵後、繋がった生地玉の中央に、ナイフで縦長方向に切り込みを入れる方法もある。

 

◆ツァイレンブレートヒェン(Zeilenbrötchen)

「ライエンブレートヒェン(Reihenbrötchen)」とも呼ばれる。共に「列」を意味し、複数の生地玉を繋げる。ドイツのザクセン地方では、小さな生地玉を3~4個、オーストリアのシュタイヤーマルクの辺りでは、長めの生地を6個ずつ繋げる。

 

☆巻き込んだ小型パン

◆シュタンゲン(Stangen)

薄い楕円形に伸ばした生地を縦長に置き、生地の端を引っ張りながら、幾重にも巻き込んで棒状にする。このまま真っ直ぐな状態で焼き上げたものがシュタンゲである。

成形直後に白ゴマ、黒ケシをまぶしたり、焼成前にブレッツェルザルツを振り掛けたりする。

 

シュタンゲン シュタンゲン 

 

◆ヘールンヒェン(Hörnchen)

上記のシュタンゲの両端を曲げて、「角(Horn:ホルン)」の形を模したのがヘールンヒェンである。

成形直後に白ゴマ、黒ケシをまぶしたり、焼成前にブレーツェルザルツを振り掛けたりする。

ドイツ南部やオーストリアでは、「キプフェル(Kipfel)」または「キプフェァル(Kipferl)」とも呼ばれる。

 

ヘールンヒェン ヘールンヒェン 

 

☆編み込んだ小型パン

◆ツェップフヒェン(Zöpfchen)

生地玉を薄く伸ばし、巻き込んで棒状にする。この棒状の生地を「一本編み(Einstrangzopf:アインシュトラングツォプフ)」、または2本に分けて「二本編み(Zweistrangzopf:ツヴァイシュトラングツォプフ)」にする。

成形直後に白ゴマ、黒ケシをまぶしたり、焼成前にブレーツェルザルツを振り掛けたりする。

 

☆ライ麦粉を配合した小型パン

ライ麦粉の配合が多くなると、ボリュームは押さえられるが、その分味は濃くなる。キャラウェイの実などの香辛料や、ロースト玉葱(Röstzwiebel:レーストツヴィーベル)、角切りにしたハム(Schinken:シンケン)など、個性の強い材料と組み合わせた小型パンもある。

 

◆シュースターユンゲン(Schusterjungen)

元々ベルリンで作られていたライ麦入りの小型パンで、「靴屋の小僧」という名前を持つ。

分割機で30等分した後、個々の生地を切り離して焼く方法と、生地を切り離さずに、そのまま纏めて一緒に焼き上げ、販売の際に分ける方法の2種類の製法がある。

 

「分割・丸め機」で分割された生地(30等分)

「分割・丸め機」で分割された生地(30等分)。

 

◆レッゲルヒェン(Röggelchen)

ドイツ西部、ケルンやデュッセルドルフを中心としたラインラント地方の、ライ麦粉入りの小型パン。

生地玉が必ず2個ずつ繋がっていて、焦げ過ぎの一歩手前までしっかりと焼き込まれる。

 

☆様々な穀物粉を配合した小型パン

全粒粉(Vollkorn:フォルコルン)や粗挽き粉(Schrot:シュロート)、様々な穀物(Getreide:ゲトライデ)を配合し、含油率の高い植物の種子(Ölsamen:エールザーメン)を混ぜ込んだ生地は、複雑な成形作業には向いていない。そのため、丸や楕円の他、分割機を使用して分割したままの四角い“切りっぱなし”が多い。

 

 様々な穀物粉を配合した小型パン 様々な穀物粉を配合した小型パン 

 

表皮上面には、白ゴマや黒ケシの他、カボチャの種(Kürbiskern:キュルビスケァン)やヒマワリの種(Sonnenblumenkern:ゾンネンブルーメンケァン)、亜麻の実(Leinsamen:ラインザーメン)や押し麦(Haferflocken:ハーファーフロッケン)などが付けられることが多く、変化に富んだ外観と風味をもたらしている。

このコラムの担当者

Kimiko Kochs

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