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【とっておきのヨーロッパだより】マラソンを通じて見えてくる、フランスの日常食
2018年03月09日

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<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>


2007年の東京マラソンを切っ掛けに、日本各地で都市マラソンが盛んに行われるようになり、日常的にトレーニングで走っていても、年々マラソンを走るランナーが増えていると実感します。
そんな筆者が日本を飛び出し、フランスのウルトラマラソンに挑戦です。
ウルトラマラソンとは、フルマラソンの距離である42.195kmを超えて走るマラソンの事で、100km走や24時間走などといった種目で実施されています。

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フランスで実施されるウルトラマラソンのポスターの例
(左)100km de Vendée(ヴァンデ100kmマラソン)
(右)100km de Cléder(クレデール100kmマラソン)


フランスでもウルトラマラソンの大会が各地で行われており、多くは200~300人の小規模のものですが、中には15,000人ほども集まる大規模な人気大会まで様々なものがあります。

これらの大会は、記録を競うよりも走ること自体を楽しんで参加する、和やかな雰囲気で実施されるものが多いです。
参加してみると、習慣や環境の違いからか、日本の大会と異なる所もしばしばあり、とても興味深いものでした。
特に食いしん坊の筆者としては、補給することが第一の目的とは言え、大会中に提供される食事には大いに興味を持ちました。
ウルトラマラソン大会では、コースの途中でランナーに飲食物を提供する補給所が設けられます。フランスで補給所は「ラヴィタイユマンRavitaillement」(注1)といい、これは文字通り「補給」を意味する言葉です。

言葉のイメージから、補給所の食にはフランス食文化の華である「グルメ(美食家)」「グルマン(食道楽)」という概念とは対極的な、機能に特化した食という印象ですが、実際に体験してみると、フランスの食文化を土台にした多彩な魅力に富むものでした。
筆者がいくつか参加した大会の様子をご紹介しながら、その中で出会った食の風景、特に補給食を中心に、フランス食文化の日常の食にふれていきます。

マラソン大会に出場するための事前申し込みや各種手続きを経て、いよいよ大会当日です。


◇受付
ゼッケンの他、必要なものを一式受け取ります。

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(左)受付の様子。日本の大会受付と同じ雰囲気 
(右)ゼッケン。安全ピンが付いていていない事が普通なので、自前で準備が必要


◇食事の提供
フランスのウルトラマラソン大会では、食事は基本的に主催者側が提供するものとされているようで、競技中の補給食の提供は勿論ですが、それ以外にスタート前やゴール後の食事も用意されていることが多いです。
会場には必ず多人数が座れる椅子とテーブルが準備され、食事が椅子に座ってできるようになっていて、会場内で提供される食事はここでいただきます。


◇スタート前の食事
スタート前の食事は多くの大会で、「パスタパーティー」となっていることが一般的です。

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パスタパーティー会場

名前の通り、パスタが提供されます。それも山盛り!です。
パスタ以外にはハム、チーズ、パン、デザートなどが有り、ワインも飲むことができます。(さすが、フランス!)
スタート前のパスタは、単なる食事提供を意味するだけでなく、競技でより良い結果を得られるようカーボローディング(注2)への配慮がなされていると思われます。

多くの大会は、朝早くスタートするので前夜に夕食を兼ねて行われていましたが、夜にスタートする大会では、夕食と兼ねて提供されました。

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出発前に会場で提供される食事の一例


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フランスでは朝食の定番、タルティーヌ


◇スタート
多くの大会で朝5時頃にスタートしますが、大会によって8時、10時など、遅めのスタート設定もありました。
スタート会場。ヨーロッパらしい、風情ある建築物が印象的です。

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(左)スタート会場横の建物は市庁舎。(「100km de Cléder」にて)
(右)「100km de Savoie」ではシャンベリーChamberryの町中からスタート


◇コース環境
走行コースの一部に地道を含むことが多く、アスファルトの場合も日本より舗装が粗いことが多いと感じました。

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畑の中の地道がコース 


◇補給所
色々な趣向で飾られていて、中には地元の伝統衣装で迎えてくれた所もありました。

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「100km de Cléder」にて

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ウルトラらしい和やかな雰囲気(「Ultratour du Léman」にて)

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1000人を超える大きな大会では、補給所も充実しています(「100km de Millau」にて)


◇補給所で提供される様々な食
準備されているものはまず、「リキッド(液体)」「ソリッド(固体)」に分けられ、ソリッドは更に、「サレ(塩味)」、「シュクレ(甘味)」、「フルーツ」に分けられて提供されていることが多いです。
以下、それぞれどのような補給食があるのかを一部ご紹介します。


◇リキッド(液体)
水は通常、ガス(炭酸)入りとガスなし、2種類のミネラルウォーターが準備されています。フランス人の多くはガス入りの水を好んで飲んでいました。
ミネラルウォーター以外には、レモンやミントの香りを付けたシロップ水をよく見かけました。ミント水はどこの大会でも準備されていたので、フランス人にとって一般的な飲み物のようです。

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左からミント水、ガス有り、ガス無し、コーラ

他にはコーラ、フルーツ(オレンジ)ジュースなどで、コーラもどこの大会でも準備されているので、フランス人の補給には欠かせないドリンクのようです。コーラは日本の大会でも人気なので、ランナーに共通する人気ドリンクと言えそうです。爽やかで飲みやすく、カロリー補給にもなることが人気の秘密です。
日本のマラソン大会で一般的なスポーツドリンクは、フランスの大会ではあまり見かけませんでした。時々見かけることはありましたが、飲んでいる人もあまりいない様でした。紹介や宣伝のために置かれている印象で、フランスでは一般的ではないようです。

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左から、ガス無し、コーラ、ガス有り、スポーツドリンク、フルーツジュース


◇ソリッド(固体)・サレ(塩味)
塩味の補給食のこと。
チーズ、ハム、サラミなどをよく見かけました。塩そのものが置かれている事もありましたが、日本の大会ではほぼ必ずあるのに比べ、フランスでは少ないと感じました。塩味の補給食が必ずあるためと思われます。

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◇ソリッド(固体)・シュクレ(甘味)
甘味の補給食のこと。
マドレーヌ、チョコレート、クッキー、パウンドケーキ、パン・デピス(注3)、パート・ド・フリュイ(注4)などをよく見かけました。

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◇フルーツ
日本の大会と同様、バナナやオレンジはどこの大会でもいつも置かれていて、中には季節のものもあり、夏はスイカやメロンをよく見かけました。

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フレッシュフルーツだけではなく、ドライフルーツも必ず準備されていて、アプリコット、レーズン、イチジクなどをよく見かけました。

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アプリコット、レーズン、イチジク 


これまでフランスと日本で数々のマラソン大会に参加してきましたが、補給所で提供される飲食物の多様性については日本の方が富んでいるようです。フランスでは、どこのマラソンに参加しても大体同じものが提供され、『補給のための食である』ということを強く意識させられるものでした。

とはいえ、日本の各地で実施されるマラソン大会に比べれば数は多くはないものの、フランスでも各地方の大会ごとにその土地のスペシャリテ(特産品、名物料理など)が提供されることもあります。
これまで参加した大会で提供された「土地の味」としては、例えばブルターニュでは焼きたてクレープ、ル・ピュイでは特産物であるレンズ豆を使ったサラダや地元産牛のミンチステーキ、サヴォアでは地元名産チーズや地ビール、スイスではミルクチョコレートなどが挙げられます。

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レンズ豆のサラダ(「Le Grand Trail du St.Jacques」にて)

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左の写真はトム・ド・サヴォア(「100km de Savoie」にて)


◇自転車の伴走
フランスの大会ではランナーに自転車で伴走する事が一般的で、彼らは「スュイヴールsuiveur(伴走者)」と呼ばれます。
伴走者には受付時に専用ゼッケンも渡され、スタートから10km程度の所から伴走が認められて、補給食やドリンクを預けておくことも出来ます。

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ランナーを待つ伴走者たち


◇距離表示
5km毎に表示されていることが多く、メッセージも書かれていることもあり、走る者にとって励みになります。

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右の写真は「ラストスパートにはちょっと早いよ!」 のメッセージ


◇ゴール
完走のゴールテープは何度切ってもうれしい!

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◇完走メダル、完走証明書など
完走メダルをくれる大会は少なめで、ある場合も日本の大会ではゴール後すぐに掛けてくれることが普通ですが、こちらではゴール後に寄る完走記念品の受取所で手渡しされます。ちょっと寂しい...
完走証も同様でもらえる事の方が少なく、必要な人は、後でインターネットから自分で印刷するようになっていることが多いです。

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右の写真は完走証明書


◇表彰
上位者の表彰が行われる事は日本と同じですが、フランスでは部門別表彰も積極的に行われていて、性別だけでなく、年代別に上位のランナーが表彰を受けます。
このため、距離による部門数×年代別×男女となり、かなりの人数が表彰を受けていました。


◇ゴール後の食事
用意されている事が普通(それも結構しっかりした量)で日本の大会ではあまり見かけません。長距離を走った後でも食事ができる強じんな胃腸をフランス人は持っているからでしょうか...

食事の内容は、壊れた筋肉の再生の為か、鳥肉や豆類などたんぱく質を多く含む料理が提供されることが多いと感じました。また、ライスサラダがよく付いていました。

こちらで米は野菜と同じような感覚で食べられていて、メイン食材の付け合わせや、サラダとしてよく使われます。ちなみにライスサラダの味は、ドレッシングのためか、酸味の強い味付けであることが多かったです。
長時間走った後は内臓がへばった状態になっていることが多く、酸っぱいものを食べると回復すると感じます。ゴール後の食事に酸っぱいものが添えられていることが多いのは、そういった配慮によるものかもしれません。

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◇参加証
フランスらしく、地元のワインやシードルをもらえることが時々ありました。中には地元野菜の詰め合わせをくれる大会も。持って帰るのが重くて大変でしたが...ありがたくいただきました。

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今回ご紹介した補給食は筆者が食べるものを選択したことはほとんどなく、大会運営側から準備されたもので、参加者やスタッフが皆同じものを食べていました。
フランスでのマラソン参加は、フランス人が日常で一般的に食べているものを知る機会でもあり、食の体験を同じくする事でフランス人の食文化の一端をも垣間見ることが出来、とても興味深い体験でした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(注1)ラヴィタイユマンRavitaillement(補給所)
ウルトラマラソンにおける補給所は、日本では「エイドステーション」や「エイド」と呼ばれています。約5kmごとに設けられていることが一般的です。
(注2)カーボローディング(グリコーゲンローディング)
長時間続く競技で、必要なエネルギーを体内に蓄えるための食事法。
(注3)パン・デピスについては、とっておきのヨーロッパだより『パン・デピスを巡る旅~長い伝統と歴史が受け継がれている地方菓子の魅力~』をご覧ください。
(注4)パート・ド・フリュイPâte de fruit
果物のピュレか果汁に砂糖を加えて煮詰め、ペクチンで固めた糖菓。(柴田書店刊『使える製菓のフランス語辞典』より)

今回紹介した大会
※本文中使用した写真は、以下の大会に参加した際に撮影したものです。
※参加した大会には「ウルトラマラソン」の他、山道を走る「トレイルラン」という形式のものも含まれます。

大会名 Trail des Coursières (103kmの部)
開催日 2017.5.13
開催地 Saint-Martin-en-Haut
http://www.coursieresdeshautsdulyonnais.org/

大会名 100km de Vendée (100kmの部)
開催日 2017.5.27
開催地 Chavagnes-en-Paillers
http://www.100kmdevendee.com/

大会名 Le Grand Trail du St.Jacques(110kmの部)
開催日 2017.6.10
開催地 Chanaleilles ~ Le Puy-en-Velay
http://www.trailsaintjacques.com/

大会名 Sri Chinmoy Races(100kmの部)
開催日 2017.6.25
開催地 Paris(Bois de Vincennes)
https://www.srichinmoyraces.org/

大会名 100km de Cléder(100kmの部)
開催日 2017.7.9
開催地 Cléder
http://www.100kmdecleder.fr/p_publier/p_index.php

大会名 Ultratour du Léman(175kmの部)
開催日 2017.9.16
開催地 Villeneuve(スイス)
http://www.ultratourduleman.ch/

大会名 100km de Millau(100kmの部)
開催日 2017.9.30
開催地 Millau
https://www.100kmdemillau.com/

大会名 100km de Savoie(100kmの部)
開催日 2017.11.4
開催地 Chambéry
http://www.goforitevent.fr/

大会名 12/2 SaintéLyon(72kmの部)
開催日 2017.12.2
開催地 Saint-Étienne ~ Lyon
http://www.saintelyon.com/

このコラムの担当者

犬飼 浩

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