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【半歩プロの西洋料理】オリーブを漬けてみる(前編)
2009年12月09日

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<【半歩プロの西洋料理】ってどんなコラム?>


「今日はお早いですね」
カウンターについたとたんにマスターの声がかかった。
何か話があって腰を落ち着けるときは同伴客の途切れる8時前後ではなく、開店時間を待ちかねるように訪れる私である。
何かを感じ取っているかのように静かにシュークルートサラダとたっぷりとグリュイエールチーズを載せたタパスと共によく冷えたスパークリングワインを差し出した。

シュークルートのサラダにたっぷりのグリュイエールチーズをのせたタパス
シュークルートのサラダにたっぷりのグリュイエールチーズをのせたタパス


「クレマン・ダルザスです」シャンパンと同じ製法で作られるクレマンの中でももっとも北で作られているものだけあって、本家のシャンパンにも通じるすっきりとした喉ごしは、シュークルートの酸味を和らげて余りある若いグリュイエールチーズのミルクの風味を押し流してくれる。さっと消えてなくなったチーズの風味にひかれた私は「ラクレットと白ワイン」と思わず注文していた。まんまと術中にはまったというわけである。

じゃがいもにたっぷりのラクレットチーズ
じゃがいもにたっぷりのラクレットチーズ


直径30センチほどのラクレットチーズを半分に切り、その断面を専用のグリルで温めて溶かす。溶かしたチーズをじゃがいもに絡めて食べるフランス・サヴォワの伝統的な家庭料理は濃厚な白ワインをぐいぐいとすすめてくれた。

同伴客が引け始めたころには酔いもまわり始めていたので、少し間を空けるためにカウンターの容器の中に無造作に詰め込まれたオリーブのオイル漬けをパンを小皿にしてつまみ始めた。

オリーブのマリネ、油の染み込んだパンがまた美味しい
オリーブのマリネ、油の染み込んだパンがまた美味しい

もちろんお供はパスティス、オレンジーナを切らしているとの事であったので、今日はペリエで割ることにした。

「これだよ、マスター」オリーブをつまみながら私は話し始める。



色付き始めたオリーブ
予想より1月早く色付き始めたオリーブ


通勤の途中、教会の前を通ると地面が薄汚れていた。今年もオリーブの実がなる季節がやってきたのであった。生のままではアクが強くて苦く、渋いオリーブの実は野良犬や猫はおろか蟻さえも寄り付かないので、雨が洗い流すのを待つしかないのである。職場にもオリーブの木は植えられているが、この教会ほど見事に実ることはまずない。しかし、昨年枝の伸びがよくなくて枝打ちを免れていた木が2本あったので、私はひそかに期待していた。実際、6月の花も中々見事であった。10月から11月にかけて黒々と色付く前に摘み取って自分の手で漬けてみたいと以前から思っていたのである。

校舎の裏の植え込みの実が早くも色付きはじめているのを確認したのは2年ぶりに本土を直撃する台風が近づいて明日は休校になるだろうという日のことであった。手をのばして実の大きさを確認していると植栽を管理するS氏が、「食べられへんよ。こないだもいでみたけど苦くて苦くて・・・」と語りかけてきた。

そのままかじってみたというS氏に「やるな・・・」という思いをいだきながら「薬品を使ってアク抜きをして、塩水に漬け込むんですよ」と答えると、「美味しいの?」と興味津々であった。


鈴なりのオリーブ(これを生でかじる人がいたとは・・・)
鈴なりのオリーブ(これを生でかじる人がいたとは・・・)


数時間後、もう一人のS氏(総務部)とのすれ違いざまの会話 私:「オリーブとってもいいですか?」 S:「写真ですか?いいですよ」 私の心(写真とるのに一々許可を得るはず無いだろ・・・) 私:「収穫するんです。塩漬けして学校のHPでUPします」 S:「いいですよ。丸坊主にしないように節度をもってくださいね」

枝ごと大胆に収穫
枝ごと大胆に収穫


限度はあってないようなもの・・・と、大豊作
節度はあっても限度はない・・・と、勝手に大豊作


収穫を始めると、このコラムを担当するAさんが通りかかった。A:「沢山なってます?今年はすごく沢山花が咲いていたので、気にはなっていたんですが・・・」私:「今度のコラム、これやります」A:「アク抜き大変でしょ?」私:「苛性ソーダを使えば簡単なんですが」A:「う~ん・・・家にあるものだけでできるなら」私:「そうですよね、あんまり薬品とか使いたくないですよね・・まあ、昔は塩漬けにしていただけらしいですからね・・・

との会話の末に・・・今、ここで飲んでいるのであった。


「とりあえず、木槌で叩くか端をカットして毎日水を換えながら何日も水にさらすところから始めるらしいんだが・・・」と私がマスターに言うと、「うちではお金をいただくものは、塩水漬けのものを買って塩抜きしてから香味材料を加えたオリーブ油でゆっくりと低温で煮てから漬け込んでますし、ただで食べていただくものは私のうちのを収穫して苛性ソーダでアク抜きしています」との事であった。

この何十年、毎年購入しているマスターにしても、苛性ソーダは薬局に行って「使用目的」を聞かれ、「住所確認(印鑑と身分証明書が必要)」した上でやっと購入できる劇物である。個人の購入はハードルが高いし、食の安全を考えるとむやみに苛性ソーダなどの薬品に頼った方法はとりたくない・・・

「針で全体に穴を開けるか端に切り込みを入れて、毎日水を換えてアク抜きをする」「木槌で叩いてひび割れを作り、毎日水を換えてやれば2週間ぐらいでアク抜きが出来て、8%の塩水に漬けておく」色々と情報は得るが、実際にやってみたという人には出会わない・・・

とりあえずやってみるだけ・・・ と言うことで、オリーブ日記の開始である。



1日目:15時30分摘果、洗浄、もう一度洗浄、更にもう一度そして切込みを入れた。

バケツで洗浄
バケツで洗浄


一個一個、カット
一個一個、カット


大変な作業だ。ナイフも、指も完全にアクまみれ。かじる必要も無い。指をなめてみる。「苦い、えぐい。」実を口に含む。舌が、歯茎がしびれる。水でアク抜きを開始。これから毎日、水換えを行う。

・・・、毎日?・・・休みはどうするのか?


1日目:17時30分水といっしょに袋に詰めて帰路に・・・重い・・・。



1日目:18時水への漬け込み開始、梅干用の桶に空きがあった、これで行こう。

アク抜き開始
アク抜き開始


どこに置く???

我が家のワイン倉庫
我が家のワイン倉庫


ガレージ脇の外階段下、ワイン倉庫に決定。水道まで5~6メートル、夏場に外気温が35℃を超えてもいつもひんやりとしている室温と風通しのよさが○、これからの季節ならきっと最適と、かってに納得・・・。

一番威張っているオリーブの桶
一番威張っているオリーブの桶


2日目:18時水に色がついている・・・!しかも、水面にはアクのリングのようなものが・・・アクが抜けているのか?となめてみるとなんとなくえぐみがある。

しかし、想像していたよりも弱い・・・大丈夫か?と不安感がよぎる。ホースを底まで突っ込んで、きれいな水があふれるまで一気に放水。今日から毎日、10日間の水の交換。始まりである。

水の色に変化、アクが表面に・・・
水の色に変化、アクが表面に・・・


3日目:18時昨日と同じでアクは少なめ・・・、今日も水の交換。


4日目:19時水の色は朝と変化無し、アクは少なめ・・・しかし、濁りが見える。オリーブをかじってみる。「渋い。」とりあえず水換え。


5日目:18時水はやや濁った感じ、アクも少し。容器の内側、落し蓋についたぬるぬる感が気になる。落し蓋を洗浄し、水換え。

水換えはホースを突っ込んであふれさせて、オリーブを空気に触れさせてはいけません
水換えはホースを突っ込んであふれさせて、オリーブを空気に触れさせないようにする


6日目:18時 水の色や濁りは落ち着いた感がある。容器の内側を軽くこすってみて、いつもより長めに水を放出。


7、8、9日目 水の色、濁りに大きな変化は無く、毎日水換え。

かじると苦さは和らいだ感がある。「渋い」という感じの味が舌に残る。


10日目:18時微量だが、常にガスが出ているような状態になってきた。においもなんとなくしていて、乳酸発酵が始まったように思える。味は生で苦瓜をかじっている程度であるが、やや後味が悪い。今日から少しずつ塩を入れてゆくことにした。当分は毎日新しい水に換えて塩を加える形で渋抜きを続けることにする。

いつもオリーブからガスが出始めた
オリーブからガスが・・・


思い切って・・・塩を投入
オリーブはこんな色に・・・思い切って、塩を投入


11日目:19時 微妙にガスが出ている。塩水を交換する。


12日目、13日目 微妙にガスが出ている。塩水を交換すると朝はとまっているが、夜にはガスが出ている。


14日目:18時オリーブの表面からガスが出ているのが、はっきりと目でわかる状態になった。本日よりパスタのゆで汁程度の塩水にして1日置きに換えることにする。

オリーブから常にガスが出ている
オリーブから常にガスが出ている


15日目 ガスが出ているのは感じられる。落し蓋の周囲やラップの裏側にガスがたまっている。そのまま。


16日目朝、ガスが出ているのが肉眼で確認できる。夜も同じく。塩水を換える。少し濃くした。


17日目 ガスが出ている。匂いも強くなってきた。かじってみる。我慢すれば食べられるレベルである。2個食べたいとは思わない。まだだ。今日はこのまま。


18日目 ガスが出ている。ふと気づくとずいぶん色が変わってきている。かじってみる。やっぱり、未だ早い。塩水を換える。少し濃くした。


20日目 ガスが出ている。かじってみる。まだ・・・水を換えて、思い切って濃い塩水にしてみた。

そろそろ、本格的に漬け込みの開始だ。


4日末とかなり水の色が変わっている
4日待つとかなり水の色が変わっている



24日目 4日間待ってみた。  かじってみる。少し我慢すれば食べられるか?しかし・・・我慢してまで食べるものでもない。30秒、1分、1分半とゆでてみる。食べられる・・・しかし、しばらくすると「えぐさ」が口に残ってきて続けて食べようとは思わない。海水より少し濃い塩水にしてみた。今回から塩水の交換は週一回にしてみよう。


本日より新規作業開始。大きな断面を作り、早くアクが抜けるか確かめるのだ。木槌で叩くとかなり激しく潰れてしまうので、種抜き器で種を抜くことにした。

1個ずつ地道に種抜き
1個ずつ地道に種抜き


種を抜いたオリーブを水に漬けるとあっという間に水が黒く染まってゆく。
期待、大・・・である。二番桶と名づけよう。


指先も見えない程のアクまみれの水に期待はふくらむ
指先も見えない程のアクまみれの水に期待はふくらむ


3時間後二番桶の真っ黒な水を換えた。



二番桶2日目
二番桶の水を換えた。水の色は昨日に比べて薄くなっている。


二番桶3日目
水の色が薄い。とりあえず水を換える。


二番桶4、5、6日目
6日目にかじってみると!何も味がしない!
えぐみどころかオリーブの味も何も感じないのだ。どうなる???


オリーブ日記、続く・・・


< オリーブを漬けてみる(中編)


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