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【独逸見聞録】プルンダータイク ~ファイネ・バックヴァーレン(其の弐)~
2013年10月11日

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<【独逸見聞録】ってどんなコラム?>


前回紹介した「ファイネ・バックヴァーレン(Feine Backwaren)」の中から、今回はヘーフェタイク(Hefeteig:発酵生地)に、油脂を何層にも折り込んだ「プルンダータイク(Plunderteig)」について紹介する。
この生地から作られる製品には、プルンダーゲベック(Plundergebäck)やクロワッサン(Croissant)があり、パイ生地と発酵生地の特徴を併せ持っている。

フィリングやクリーム類、果物を組み合わせたプルンダー(Plunder)各種 クロワッサン(Croissant)各種
左は、フィリングやクリーム類、果物を組み合わせたプルンダー(Plunder)各種。
右は、クロワッサン(Croissant)各種。

★プルンダータイク(Plunderteig)
プルンダータイクは、層になるように油脂(Fett:フェット)を包んで折り込んだ軽いヘーフェタイク(Hefeteig:発酵生地)である。このためパイ生地(Blätterteig:ブレッタータイク)と発酵生地の特徴を併せ持つ。「ゲロルター・ヘーフェタイク(gerollter Hefeteig)」または「トゥァリァター・ヘーフェタイク(tourierter Hefeteig)」とも呼ばれる。

*「プルンダータイク」と「ブレッタータイク」の相違
プルンダータイクとブレッタータイクは、どちらも固形油脂を折り込んだ生地である。

ブレッタータイクは、「グルントタイク(Grundteig:基本生地)」と呼ばれる、小麦粉、塩、水から作られる硬めの生地、プルンダータイクは、膨張剤としてイーストを添加した「ヘーフェタイク」を使用する。

★折り込み用油脂(Ziehfett:ツィーフェット)
折り込みに相応しいのは、柔軟性と伸展性に富む、水分の少ない油脂である。
適しているのは、普通のバター(Butter:ブッター)の他、折り込み用バター(Ziehbutter:ツィーブッター)、折り込み用マーガリン(Ziehmargarine:ツィーマーガリーネ)やバターを添加した折り込み用マーガリン(Ziehmargarine mit Butteranteil)などである。

折り込み用マーガリン。右は、折り込み用バター
左は、折り込み用マーガリン。右は、折り込み用バター。

この中で風味が一番良いのはバターであるが、融点が低いため、そのままでは作業性は良くない。
伸展性を持たせるために、冷たいものを少量の小麦粉と一緒に平らに加工して使用する。
マーガリン(Margarine:マーガリーネ)は、バターよりも可塑性(外部から加わる物理的な力により、その形を自由に変える性質)を発揮できる温度帯が広い。
通常、バターは82%以上の脂肪分と16%以下の水分を含んでいる。マーガリンの脂肪分も80%以上とそれ程高くない。これに対して、折り込み用油脂に含まれる脂肪分は90%前後と高く、その分、水分含有量は低くなっている。また、生地に包み込む作業を円滑に行うため、平らな形で販売されている。

★折り込み作業(Einziehen:アインツィーエン)
折り込み用の油脂を準備する(硬さと温度を発酵生地の状態と揃える)。冷却した発酵生地を平らに伸ばして、油脂を包み込む。この作業を「アインシュラーゲン:Einschlagen」と呼ぶ。
そして、この生地を薄く伸ばして折り畳むことを「トゥァリァレン:Tourieren」と呼び、生地の方向を90度ずつ変えながら複数回繰り返す。
生地の伸展性を回復させるために、冷却と休憩をさせながら行う。

*アインファッへ・トゥアー(einfache Tour)
折り込み生地を製造する際の作業工程。生地を三重に重ねることから、日本では「三つ折り」と呼ばれる。伸ばした生地の外側3分の1を、中央の3分の1に両側から重ねる。その際、油脂の層の数は3倍になる。

*ドッペルテ・トゥアー(doppelte Tour)
折り込み生地を製造する際の作業工程で、生地を四重に重ねることから、「四つ折り」と呼ばれる。
初めに伸ばした生地の両外の4分の1を中央に重ね、そしてもう一度中央線で折り畳む。その際、油脂の層の数は4倍になる。

油脂を包むための発酵生地(発酵・冷却後) 折り込み用油脂を包み、四つ折りが終了した状態
左は、油脂を包むための発酵生地(発酵・冷却後)。
右は、折り込み用油脂を包み、四つ折りが終了した状態。


★プルンダータイクの種類
「ドイツ食品便覧(Deutsches Lebensmittelbuch:ドイチェス・レーベンスミッテルブッフ)」に収録されている「ファイネ・バックヴァーレンの指導原則(Leitsätze für Feine Backwaren:ライトゼッツェ・フュァ・ファイネ・バックヴァーレン)」の中に、プルンダーの種類と、その油脂含有量について以下のような記述がある。

*プルンダー(Plunder)
ヘーフェタイク中の粉(主に小麦粉)1000gに対して、最低でも300gの油脂を含む。

*デニッシャ-・プルンダー(Dänischer Plunder)または
      コペンハーゲナー・プルンダー(Kopenhagener Plunder)

ヘーフェタイク中の粉(主に小麦粉)1000gに対して最低でも600gの油脂を含む。
(この油脂量には、折り込み用だけでなく、生地中の油脂も含まれる)。

ヘーフェタイク中の折り込み油脂の割合が高い程、より多くの折り込み油脂の層を必要とする。
そのため、折り込み油脂量の少ないプルンダーでは、三つ折りを3回するのみである(27層)。
デニッシャー・プルンダーでは、三つ折りを2回と四つ折りを1回する(36層)。

1kgの発酵生地に対する
折り込み油脂量

折り込み回数

折り込み油脂の層

 150~200g  三つ折り1回と四つ折り1回  12
 250~300g  三つ折り3回  27
 350~500g  三つ折り2回と四つ折り1回  36

★プルンダーゲベック(Plundergebäck)
プルンダータイクから作られる発酵菓子で、ナッツ(Nuss:ヌス)、マジパン(Marzipan:マルツィパン)、黒ケシ(Mohn:モーン)やフレッシュチーズのクヴァーク(Quark)などのフィリング、また、カスタードクリーム(Puddingcreme:プディングクレーム)や果物(Obst:オプスト)と組み合わせる。
大抵の場合、焼成後にアプリコットジャム(Aprikosenkonfitüre:アプリコーゼンコンフィテューレ)と糖衣(Fondant:フォンダン)を表面に塗って仕上げる。
ブッタープルンダーゲベック(Butter Plundergebäck)と呼ぶ場合には、折り込み用の油脂だけでなく、発酵生地中の油脂としても、バターのみの使用が許されている。

☆ヌスヘールンヒェン(Nusshörnchen)
プルンダータイクを薄いシート状に伸ばし、二等辺三角形に切り分ける。
底辺に近い部分にナッツのフィリング(Nussfüllung:ヌスフュルンク)をのせて、手前に巻き込む。
発酵させて焼成した後、煮詰めたアプリコットジャム、フォンダンの順に塗る。

ヌスヘールンヒェン


☆ヌスオーァ(Nussohr)
プルンダータイクを薄いシート状に伸ばし、全面にナッツのフィリングを塗り広げる。上下2方向の端から何度か折り畳み、中央で2つの渦巻きを重ね合わせる。軸に垂直に切って、平らな面を上にしてオーブンプレートにのせる。発酵させて焼成した後、煮詰めたアプリコットジャム、フォンダンの順に塗る。
焼き上がった形が似ていることから、「耳(Ohr:オーァ)」と名付けられている。

プルンダータイクを薄いシート状に伸ばし、全面にナッツのフィリングを塗り広げる。 上下2方向の端から何度か折り畳み、中央で2つの渦巻きを重ね合わせる。
 
発酵させて焼成した後、煮詰めたアプリコットジャム、フォンダンの順に塗る。 焼き上がった形が似ていることから、「耳(Ohr:オーァ)」と名付けられている。

☆プディングプルンダー(Puddingplunder)
プルンダータイクをシート状に伸ばし、細い帯状に切る。手でひねって螺旋状にねじり、渦巻き状にゆるく巻く。
発酵後、カスタードクリーム(Puddingcreme:プディングクレーム)を絞って、そぼろ状のシュトロイゼル(Streusel)を振り掛けて焼く。冷却後、粉砂糖を振る。

手でひねって螺旋状にねじり、渦巻き状にゆるく巻く。 冷却後、粉砂糖を振る。


☆オプストプルンダー(Obstplunder)
プルンダータイクを薄いシート状に伸ばし、正方形に切り分ける。それを2つに折り畳んで縦に切り込みを入れる。片方の端を穴に通し、両端を持って引き手綱形に成形する。中央の穴の部分に、切り落とした生地を詰める。発酵後、窪んだ部分にチェリーコンポート(Kirschkompott:キルシュコンポット)を絞ったり、カスタードクリームを絞って果物(Obst:オプスト)をのせたりする。
焼成後、煮詰めたアプリコットジャム、フォンダンを塗る。果物の上にはジェレーグス(Geleeguss)と呼ばれる艶出しを塗り、乾燥を防ぐ。

成形する。 焼成後、煮詰めたアプリコットジャム、フォンダンを塗る。

焼成後1 焼成後2
焼成後、煮詰めたアプリコットジャムを塗り、その後フォンダンや粉砂糖で仕上げる。


★クロワッサン(Croissant:クロアッソーン)
クロワッサンは、プルンダーと比較すると生地中の砂糖や卵の割合が少ない。
薄く伸ばした生地を二等辺三角形に切り、頂点を手前にして底辺から手前に巻き込んで、三日月形に成形する。
ブッタークロワッサン(Buttercroissant)と呼ぶ場合には、折り込み用の油脂だけでなく、発酵生地中の油脂としても、バターのみの使用が許されている。
主に朝食として食べられるフランスとは異なり、ドイツでは間食として購入する人の割合が高い。

クロワッサン1 クロワッサン2


☆ショコラーデンクロワッサン(Schokoladencroissant)
クロワッサンの生地を長方形に切り、チョコレート(Schokolade:ショコラーデ)を巻く。このチョコレートは棒または板状で、融点が高く焼き込み専用である。
「ショコクロワッサン(Schokocroissant)」と短縮形でも呼ばれる。原語であるフランス語で「パン・オ・ショコラ(Pain au chocolat)」と呼ぶこともあるが、フランスとの国境に近い地域でも、それは全体の一割程度である。

クロワッサン生地で、チョコレートを巻く1 クロワッサン生地で、チョコレートを巻く2
クロワッサン生地で、チョコレートを巻く。

☆ラウゲンクロワッサン(Laugencroissant)
ラウゲンクロワッサンは、赤褐色の外皮と、独特の風味を持ち、特にドイツ南部で好まれている。
クロワッサンと同様に成形した後、一度冷却してから、ブレーツェル(Brezel)やラウゲンゲベック(Laugengebäck) に使用するブレーツェルラウゲ(Brezellauge:ラウゲン溶液)に浸ける。
その後は、クロワッサンと同様に発酵させて焼成する。
*ブレーツェルラウゲは、4%以下の水酸化ナトリウム(Natriumhydroxid=NaOH)と、96%以上の水からなる(溶液の濃度は4%以下)。表記義務のない食品添加物のひとつに数えられる。

ラウゲンクロワッサン1 ラウゲンクロワッサン2
成形後、一度冷却してからラウゲン溶液に浸ける。

上記以外にも、ジャム(Konfitüre:コンフィテューレ)やマジパン(Marzipan:マルツィパン)、チーズ(Käse:ケーゼ)やハム(Schinken:シンケン)などのフィリングが用いられ、組み合わせは実に多様である。

このコラムの担当者

Kimiko Kochs

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