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連載コラム 和のおいしいことば玉手箱
日本には、昔から言い伝えられてきた「おばあちゃんの知恵袋」のような、食に関する言葉がたくさんあります。これらの言葉は、科学的にもきちんとした根拠があり、道理にかなっているということがほとんどです。ここでは、これらの食に関すること わざや格言などからおいしさを再発見してみます。
蓼(たで)食う虫も好き好き
蓼(たで)食う虫も好き好き 蓼(たで)食う虫も好き好き
解説

「蓼(たで)食う虫も好き好き」
辛い蓼(たで)を好んで食う虫があるように、人の好みはさまざまで、一概には言えないというたとえ。「蓼食う虫は辛(から)きを知らず」ともいう。
 蓼は、タデ科タデ属に分類される草本の総称で、狭義には柳蓼(やなぎたで)のことをいう。「蓼食う虫も好き好き」のことわざに登場するのはこの柳蓼で、また、鮎料理に欠かせない蓼酢の材料でもある。柳蓼は、草全体が辛く、特有のにおいを持ち、川辺や湿地帯に生える。鮎釣りをするような川の岸には、この柳蓼や他にもよく似た蓼の仲間が生えているが、見分け方は葉を少し噛んでみるとよい。他の蓼は辛味を感じないので、噛んで辛いのが柳蓼である。ただし、噛んでみてから辛味を感じるまでに数秒かかるので、知らずに噛み続けると、口の中が大変なことになる。ご注意いただきたい。
  蓼の辛味成分はタデオナールと呼ばれるもので、舌の表面に分布する味覚を感じる味蕾(みらい)細胞の中に、このタデオナールを認識する部分があり、辛く感じるといわれている。ただ、まれにこの部分が欠落している人がいて、そういう人は、蓼を噛んでも辛く感じないらしい。
  蓼につく「蓼食う虫」たちはさまざまで、まとめて「蓼虫(たでむし)」と呼ばれるが、いずれにせよ、川辺に生えている蓼の仲間の中で、柳蓼だけがほとんど虫に食われて穴だらけである。これも、柳蓼を他の蓼と見分ける目安になる。料理屋ではもちろん虫が食ったものは使えないので、栽培されたきれいな蓼を使うが、鮎釣りを楽しむ方には、釣り上げた鮎と共に、是非とも川辺に生えた柳蓼も持ち帰ってもらいたい。

 蓼の名前の由来は、舌をただれさせるほど辛いところから来ているが、わさびなどと違って、鼻につんとくることはなく、食べた瞬間、刺激がさっと走るといった具合である。殺菌効果があり、民間薬として虫さされの治療や利尿剤としても用いられていた。  さて、蓼といえば、「鮎蓼(あゆたで)」と呼ばれるぐらい、鮎との相性が抜群によい。特に塩焼きにした焼きたての鮎を「蓼酢」に浸してかぶりつくのが最高である。鮎を焼く時には頭を下に向け、鮎の脂が頭に集まってカリカリになるようにして、全体にきれいな焼き色がつくように焼き、これを頭からかぶりつく。鮎の内臓のほろ苦さと蓼のピリ辛さが融合した深い味わいは、鮎好きにはたまらない一品である。
  蓼酢は、若く柔らかい蓼の葉を摘んで適当に切り、すり鉢でよくすりつぶし、水につけてふやかしたご飯を水気を切って加え、よくすり混ぜる。これを裏漉し、塩を加えてさらにすり混ぜ、煮切り酒、酢を少しずつ加えてのばして作る。言ってみれば、蓼のペーストに二杯酢を混ぜたものだが、そのままだと蓼のペーストが沈むので、ふやかしたご飯を混ぜることで沈むのを防ぐ。ただし、この蓼酢は酢を合わせると20分くらいで色が変わってくるから、鮎の焼け具合を見ながら作ることが肝心である。

 蓼は鮎以外にも、あじやすずきなどの夏魚の塩焼きに蓼酢を添えたり、田楽味噌に加えたり、細く切って大根のけんに混ぜて、彩りとして添えたりする。また、蓼の双葉は芽蓼(めたで)と言って、「紅蓼(べにたで)」と「青蓼(あおたで)」があり、造りのつまに使ったり、吸い口として使うこともある。「蓼食う虫も好き好き」などと、うまくないものの代表選手のように言われるが、意外と使える食材なのである。


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タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
人物 小谷 良孝
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