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連載コラム にほんの四季便り
春夏秋冬がはっきりした日本では、四季折々の風物詩のなかにも季節のうつろいを感じとることができます。
このコラムでは、日本の四季に関連のある言葉と料理をご紹介し、季節を表すことばの美しさ、奥深さに、改めて目を向けてみたいと思います。
秋の実り
秋の実り
 秋も深まると、夏の太陽をいっぱい受けて成長した野の野菜や果物が実を結び、茎や根の部分は大きく成長して食べ頃となる。山に分け入ると、木の上には木の実がなり、足元にはきのこがニョキニョキと顔を出す。海では水温が徐々に下がるため、ほどよく脂がのった魚が泳ぐようになる。
 この季節は、我々食いしん坊にとっては、一年で最も至福の時期であるといっても過言ではない。
 テレビの料理番組で、「今日は地元の『サンカイの珍味』を取り寄せて作られた、お料理をご紹介します。」などとレポーターが説明するのを耳にしたことがあるだろうか。ここでいう『サンカイの珍味』は、一般的には漢字で「山海」と書くが、日本料理業界では「三界」と書くこともある。三つの世界、すなわち「山、野、海でとれた珍しい食材」という意味で、それらが一番多く出揃うのが秋である。
 また、日本人は秋になると新米を心待ちにする。それと同じように、香り高い新そばを待つそば好きの人も多い。そばの実を石臼で挽いて粉にしてからすぐに手打ちそばにしたものは、「三たて」といっておいしいとされる。三たてとは、「挽きたて、打ちたて、ゆがきたて」を指す。ここに「とれたて」も加えたいものである。新そばを使ってそばを打つと、風味や香りがよいだけでなく、粉に水を加えたときに粘りがあってまとまりやすく、ゆでたときの食感もおのずとよくなるからである。
 そばのエピソードといえば、ネパールの大使館で勤務される方に、次のような話を聞いたことがある。その方が赴任されて間もない頃、ネパールの外交官の来日に同行するように命じられて帰国し、その際に、日本の文化を伝えようと、東京の有名なそば屋にお連れすることにした。しかし、ネパールの外交官はそばが出てくると、なぜか怪訝な顔をされ、そばには手をつけずに店を出て行かれたそうである。着任後、間もない彼は、ネパールではそばは一番貧しい人々が主食としているものだということをまだ理解しておらず、大恥をかいたそうである。

 ネパールといえば、私もある経験がある。10年ほど前、タイの日本大使館のタイ人公邸料理人育成教室で指導するため、タイのバンコックで数ヶ月過ごしたことがある。食材の調達に、日本の某大手デパートが出資するスーパーも利用していたのだが、そこで7月末から8月初旬に大量の松茸を格安の値段で見つけて驚いた。その松茸は、少し色が淡く、香りも少ないような印象だったが、風味、味ともに立派に松茸といえるものであった。中国産でも韓国産でもこの値段でバンコックのスーパーに並ぶことはないだろう。以前、顔見知りになったそのスーパーの支配人に尋ねると、ネパールでとれた松茸を「ヒマラヤ松茸」と称して直接ネパールからバンコックに輸入しているとのことだった。最初は、バンコック市内の日本料理店の依頼で少量を輸入していたが、日本料理店に食事に来た多くのバンコック在住の日本人たちから自分も家で使いたいという要望があって、スーパーで販売するようになったらしい。ネパールの人々にとって、松茸は受け入れられない香りを持つきのこで食用とされないが、外貨を稼ぐ一つの方法としては受け入れられたようである。しかし、タイの経済危機の際にこのスーパーがバンコックから撤退してからは、バンコックでヒマラヤ松茸を見かけることがなくなった。

 やはり日本人は、秋のきのこといえば、松茸を思い浮かべる。しめじ、えのき茸、舞茸などのきのこの旬も、本来は秋なのだが、最近は、椎茸をはじめとして、これらのきのこが人工的に栽培できるようになり、栽培されたものが年中出回って、旬が感じられなくなっている。ただ、松茸は生きた松の根に生える人工栽培が難しいきのこなので、希少価値で高値がつく。近年、中国産、韓国産、カナダ産も出回っているが、確かに松茸には違いないとはいえ、国産のものよりも香りが弱く、見た目も我々が想像する松茸の色や形とはいささか様子が異なる。

 私の子供の頃は、食卓に上るきのこといえば、ほとんどが椎茸で、秋になると年に一度、母親が奮発して買った松茸を細かく刻んで松茸ご飯を作ってくれた。当然、八百屋の店頭に並ぶきのこは椎茸と松茸くらいのもので、他のきのこは「きのこ狩り」と称したハイキングで、自分たちでとってくるしか食べる方法がなかった。
 私の実家の町内には、きのこ博士のようなきのこのことなら何でも知っているというアウトドアの達人のおじさんがいて、このおじさんのもと、町内の子供たちが集まってきのこ狩りに出かけたものである。近くの丘陵を中心に丸一日かけて、約7〜8kmの起伏のあるコースを歩き、きのこを眼を皿のようにして探し、見つけたきのこが食べられるかどうかをこの達人にお伺いをたてて、食べられるきのこのみを持ち帰るのである。歩き回ってクタクタになって帰ってきても、数本のきのこを見つけられればよいほうで、まったく見つけられないときもあったが、なぜか楽しくて、また秋になれば達人とともに出かけていったものである。

 今回の料理は、これらのきのこをメインに「きのこのうま煮」を紹介する。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ きのこのうま煮

タイ語の話せる日本料理のおとうちゃん
人物 小谷 良孝
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