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『シリーズ 釣って、食べて、生きた! ~作家 開高健の世界~』ロケ日記 ⑤(最終)

テレビ

2012.02.08

8月3日(水)曇り、霧模様で風が強く寒い
 昨夜のショックと疲れで、目が覚めたのは朝7時ごろだった。
着の身着のまま寝ていたので、気を取り直すべくシャワーをあびる。
しかし、ホーマーもサディコーブも完全に希望は絶たれた。30年前もやはり最終日に、飛行機が飛ばず結局、
4~5日間足止めをくらったが、今回はさらに長期にわたる足止めの懸念も出てきた。私達以外にもすでに11日間もキャンセル
待ちしている人もいるという話も耳に入ってきていた。
 とにかく、この島からいつ出られるのかは未定となり、持ち込んだ食料もほとんど底をついている。無駄なキャンセル料やこの島での余計な滞在費
が嵩んだためできるだけ無駄な出費を抑えることになる。生協への朝食の買出しも、複数人数で行くと無駄な出費になるので、
スタッフ一人が必要最低限の食材を購入し、質素かつ現実的な食卓となる。
 「捨てる神あれば拾う神あり」とはよくいったもので、そうこうしているうちに航空会社(ペンエアー)側も着陸できず、
キャンセル待ちの人数も累積して一機分にでもなったか?急に臨時便が飛ぶことになる。
うまくいけば私たち全員も乗ることができる。そして、この飛行機に乗ることができれば帰国便も予定通りの便に乗ることが
可能になる。

  ほんとうにこれが最後の期待と胸膨らませるがまだまだ安心は出来ない。何度も期待を裏切られてきたので半信半疑。
でもはやる気持ちを抑えることはできない。そして、どんな状況でも境遇でも人は空腹を覚えるものだ。
残った乾麺と乾燥若布でシンプルな若布うどんとインノさんに頂いたたサーモンの切り身を蒸して清蒸のソース
のみをかけたサーモンの清蒸ご飯もどきという風変わりな相性の昼食にも皆は大喜びしてくれた。

 いずれにせよ飛行機の出発は夜になるので出発前の腹ごしらえをせねば、と最後の米を炊き、昼の残りの鮭のほぐし身を
入れたおにぎりと若布の味噌汁で、最後の夕食をとる。これにて食材は完全に底をつく。全てが終了。

「もう精魂尽き果てた」 R0014189s.jpg

飛行機はアンクを無事離陸したとの情報を得て、勢いづいたトムさんがトナカイの肉を使ってシチューを作ることになり、その手伝いをする。
 20:00頃、シチューとパンを食し、20:30に空港に向かう。空港で荷物をおろし、ひたすら飛行機を待つ、
22時過ぎに飛行機の爆音が聞こえるが、近づいたり遠ざかったりを2回繰り返す。不吉な予感に満たされるが、3回目エンジン音
が近づいてくるとまさに神が降臨するように帯状に雲が切れて青空が見えた。その雲の隙間から機影が見え、無事滑走路に
無事着陸。一同から盛大な拍手が沸き起こる。この時の感動の大きさは半端じゃなかった。
 さていよいよ島から脱出と意気込んだ私たちの前にまたまた、想定外の問題が生じる。「人は何とか乗せることが出来るが、
荷物を積むスペースがない」という機長からのアナウンス。
 詳細を確認してみると本来なら先にセントポールに降りて、郵便物や生活品と乗客をおろしてから来るのだが、
天候の状況を見て優先順位を急遽変更してセントジョージ島に着陸したためここ降ろし荷物と空いた空席ぐらいでは十分な
スペースを確保することができないというのだ。
 結局、人だけを乗せて出発し、荷物は次の定期便で運ぶということになるが、TVの撮影機材だけは載せないことには
最終日のアンカレッジの景色が撮れないので、談判になり押し問答が繰り返されるが結局機内の通路や操縦室など
に分散して、載せることができた。しかし、個人の荷物やスーツケースは島に残ることになる。
日付けも変わった8月4日の0時過ぎにようやく離陸。

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8月4日(木)くもり時々晴れ
 セントジョージ島を離陸し、セントポール島で何人かの乗客、郵便物や荷物を降ろして、午前2時ごろアンカレッジ
に向けて離陸。早朝4:00頃無事アンカレッジに着陸。全員疲労困憊。
 早速、荷物の確認をするとカメラの三脚が見つからない。空港のペンエアーのカウンターで到着していない荷物をどうするか
の相談が始まる。次回の定期便では、もう明日の帰国便に乗せることが出来ず、確かに身軽で帰国できるが、着替えも何も無いのは
限りなく不便である。とはいえ背に腹はかえれない。
 結局、各自の自宅住所あてに送ってもらうために細かな書類に細部まで項目を書き残して依頼するが、カメラの三脚だけは
税関を通る際に製造番号などの照会が必要なので航空会社の理由書が必要だと言う。あれやこれやですったもんだの末、
手続きが終了したのは午前05:30になっていた。とりあえず少しは睡眠をとる必要があるのでなんとかホテルを見つけ直ぐに移動。
まずは空腹を満たすべくホテルの朝食をとり、風呂に入り、昼まで睡眠をとる。
 午後から、スタッフの一人とアンカレッジの街に出て、『熊五郎』でラーメン、イクラおにぎり、そして餃子で乾杯。ホテルに
帰ると久々の朗報が入っていた。セントジョージ島に残してきた荷物を別航空会社の貨物便が深夜にアンカレッジ空港に届けて
くれるという。上手くいけば出国前に着替えや荷物の整理が出来る。嬉しい。
夕食はトムさんを迎えて本当の打ち上げの食事となる。しかも、店は念願のキャトルカンパニー(開高先生も昔通った、肉とロブス
ターやキングクラブの店)。残念ながら時期的にアラスカンキングクラブはなかったが、サーロインとロブスターの盛り合わせや、
懐かしいズッキーニフライなどなど際限なき食欲でむさぼりついた。
 
8月5日(金)帰国の途へ
 気持ち良くうたたねをしていると午前3:00頃に荷物が着いたとの連絡が入り、部屋に運び、荷物整理と着替えなどをしていて
気がつくと空港へ向う時間になってしまう。
 アンカラッジ空港をAM7:00すぎに離陸し、3時間ほどでポートランド空港に到着し、空港内でトランジットの待ち時間を
過ごすことにし、免税店を探すが、なんとこの空港には免税店はなく、もうがっかり!
 成田行きの飛行機は順調に飛行を続け、8月6日(土)18:00前に着陸。 成田には、田口プロデューサーが迎えてくれ、大きな
バンで皆さんとともに東京駅まで送ってくれた。その後、新幹線で大阪へ。やっと無事に終了した満足感を感じた。

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