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【独逸見聞録】ミツバチと蜜源植物 ~ハチミツ(其の四)~
2017年11月10日

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<【独逸見聞録】ってどんなコラム?>


養蜂の主な目的は、ハチミツ(Honig:ホーニッヒ)や蜜蝋(Bienenwachs:ビーネンヴァクス)などを採取することであるが、農作物の受粉を確実にするための花粉媒介にも利用されている。
これまでに紹介してきたハチミツは、「ホーニッヒフェァオルドヌング(Honigverordnung)」「ハチミツの指導原則(Leitsätze für Honig:ライトゼッツェ・フュァ・ホーニッヒ)」の中で取り上げられているものが中心であったが、これ以外にも蜜源となる植物は沢山存在する。


★移動養蜂と定置養蜂
ミツバチ(Biene:ビーネ)を飼育する「養蜂」には、移動式と定置式がある。
「移動養蜂(Wanderstand:ヴァンダーシュタント)」では、広大なアブラナ(Raps:ラプス)の花畑、シナノキ(Linde:リンデ)の並木道やクリ(Kastanien:カスターニエン)の森など、養蜂家(Imker:イムカー)は、それぞれの開花時期に合わせて、ミツバチの巣箱(Bienenstock:ビーネンシュトック)を移動させる。
「定置養蜂(Dauerstand:ダウァーシュタント)」では、巣箱を定位置に固定し、果樹や草花など開花期の異なる複数の植物に由来するハチミツを採取する。

定置養蜂のミツバチの巣箱
定置養蜂のミツバチの巣箱(Bienenstock:ビーネンシュトック)


★ミツバチと蜜源植物
ミツバチに、花蜜(Nektar:ネクター)や花粉(Pollen:ポレン)を供給する植物(Pflanze:プランツェ)は、ビーネントラハトプランツェ(Bienentrachtpflanze)」または「ビーネンヴァイデ(Bienenweide)」と呼ばれる。

花蜜や花粉の供給源として、単一の植物が、広い面積に大量に栽培されている場合には、「マッセントラハト(Massentracht)」と呼ばれる。
全て、または大部分が1種類の植物に由来するハチミツである「ゾルテンホーニッヒ(Sortenhonig:単花蜜)」を採取するには、マッセントラハトが効果的である。

これに対して、自然のまま、または自然に近い状態で、様々な蜜源植物が混在する場合には、「レッパートラハト(Läppertracht)」と呼ばれる。
同時、または異なる時期に次々と開花することによって、春先から秋まで、トラハトリュッケ(Trachtlücke)と呼ばれる、蜜源の空白期間を無くすることが可能である。
この環境下で集められたハチミツは、必然的に「ミッシュホーニッヒ(Mischhonig:百花蜜)」となる。


☆レーヴェンツァーンホーニッヒ(Löwenzahnhonig)
レーヴェンツァーンブリューテンホーニッヒ(Löwenzahnblütenhonig)、レーヴェンツァーンホーニッヒは、キク科タンポポ属の多年草「セイヨウタンポポ」の花蜜からなるハチミツである。

セイヨウタンポポは、ブッターブルーメ(Butterblume)、クーブルーメ(Kuhblume)などの異名を持つ。
牧草地(Wiese:ヴィーゼ)、耕地(Acker:アッカー)用の植物として、また道端にも生息していて、ミツバチ以外の昆虫にとっても、有益な蜜源となっている。

色:     黄金色、琥珀色
香り:    干し草の様な、タンポポの花の香り
風味:    フルーティーで酸味があり、力強い、特徴のある風味

レーヴェンツァーンホーニッヒ レーヴェンツァーンホーニッヒ
レーヴェンツァーンホーニッヒは、比較的短期間で結晶化が始まるため、
攪拌して固めのクリーム状に加工されることが多い。

レーヴェンツァーン・ミット・フリュートラハト レーヴェンツァーン・ミット・フリュートラハト
「Löwenzahn mit Frühtracht(レーヴェンツァーン・ミット・フリュートラハト)」は、
タンポポの単花ハチミツではなく、春の時期に採取された百花蜜も入っている。


花蜜量:   豊富
花粉量:   非常に豊富
開花時期:  4月初めから6月下旬頃まで


☆キルシュホーニッヒ(Kirschhonig)
キルシュブリューテンホーニッヒ(Kirschblütenhonig)、キルシュホーニッヒは、バラ科サクラ属サクラ亜族「セイヨウミザクラ」の花蜜からなるハチミツである。

フォーゲルキルシェ(Vogelkirsche)には、野生種と栽培種があり、サクランボ(桜桃)の多くの品種がこの種に由来している。
野生種は、広葉樹と針葉樹の混在する雑木林を好む。
ジュースキルシェ(Süßkirsche)は、品種改良された栽培種の中で、大きめの甘いサクランボの実をつける品種の総称である。

色:     淡黄色
香り:    微かな桜の花の香り
風味:    穏やかで花の様な風味、アーモンドを思わせる後味

キルシュホーニッヒ キルシュホーニッヒ
キルシュホーニッヒの繊細な後味は、同様にバラ科のアーモンド(Mandel:マンデル)を思わせる。


花蜜量:  非常に豊富
花粉量:  非常に豊富
開花時期: 4月半ばから5月半ば頃まで



☆アプフェルホーニッヒ(Apfelhonig)
アプフェルブリューテンホーニッヒ(Apfelblütenhonig)、アプフェルホーニッヒは、バラ科リンゴ属の落葉高木樹「リンゴ」の花蜜からなるハチミツである。

花蜜、花粉共に多いので、春の重要な蜜源となっている筈だが、単花ハチミツとして見掛ける機会は多くない。リンゴ栽培が盛んな、イタリアの南チロル地方が産地として有名らしいが、ドイツ産は殆ど見当たらない。

花蜜量:  非常に豊富
花粉量:  非常に豊富
開花時期: 4月半ばから5月末頃まで


☆ビルネ(Birne)
セイヨウナシは、バラ科ナシ属の植物で、単花ハチミツとして見掛ける機会はないが、花蜜、花粉共に多く、重要な蜜源となっている。

花蜜量:  非常に豊富
花粉量:  非常に豊富
開花時期: 4月半ばから5月末頃まで

因みに、「ビルネンホーニッヒ(Birnenhonig:ビルネンホーニッヒ)」の名称は、セイヨウナシの花蜜からなるハチミツではなく、果汁をパンに塗れる固さにまで煮詰めたものを示す。不透明な濃褐色で、濃い粘度に濃縮されたビルネンホーニッヒは、「ビルネンクラウト(Birnenkraut)」とも呼ばれる。

バラ科の果樹の種類は非常に多く、春から初夏にかけての重要な蜜源となっている。
4月初めから5月初め頃には、セイヨウミザクラ(Kirsche:キルシェ)、モモ(Pfirsich:プフィルジッヒ)、セイヨウナシ(Biene:ビルネ)、セイヨウスモモ(Zwetschge:ツヴェツィゲ)などが開花し、5月半ば頃には、リンゴ(Apfel:アプフェル)もそれに続く。

一般に、これらのバラ科の果樹の花は、花蜜だけでなく、タンパク質源となる花粉も豊富である。
ミツバチは花蜜を集め、ハチミツを作り出すだけでなく、花粉を運び、受粉に貢献する「ベシュトイバー(Bestäuber)としても、大きな役割を果たしている。

上記の果樹の花蜜は、同時期に開花する幾つかの果樹と一緒に、「オプストブリューテンホーニッヒ(Obstblütenhonig)」の総称で呼ばれることが多く、「ゾルテンホーニッヒ(Sortenhonig)」と呼ばれる「単花蜜」となることは稀である。
また、他の複数の草花のハチミツと一緒の場合には、単に「ブリューテンホーニッヒ(Blütenhonig)」と呼ばれる。

例えば、セイヨウミザクラとセイヨウタンポポが同じ地域で、ほぼ同時に開花時期を迎えた場合には、下記の様なハチミツが採取される。
全体に占める割合の高い蜜源植物の名称が先に記される。

キルシュホーニッヒ・ミット・レーヴェンツァーン キルシュホーニッヒ・ミット・レーヴェンツァーン
「キルシュホーニッヒ・ミット・レーヴェンツァーン(Kirschhonig mit Löwenzahn)」という名前の、
タンポポ入りサクラのハチミツである。
左側は採取後そのままの状態、右側は充填する前に、攪拌して固めのクリーム状にしたもの。



☆コルンブルーメンホーニッヒ(Kornblumenhonig)
コルンブルーメンブリューテンホーニッヒ(Kornblumenblütenhonig)、コルンブルーメンホーニッヒは、キク科ヤグルマギク属の一年草「ヤグルマギク」の花蜜からなるハチミツである。

ヤグルマギクは、カイザーブルーメ(Kaiserblume)、コルンムッター(Kornmutter)などの異名を持つ。
その名の通り、穀物畑(Getreidefelder:ゲトライデフェルダー)の中や周辺で、晩夏に鮮烈な青色の花を咲かせる。

色:     淡黄色から黄色
香り:    弱く、あまり特徴的ではない香り
風味:    微かな渋味と酸味のある、フルーティーな風味


コルンブルーメンホーニッヒ コルンブルーメンホーニッヒ
コルンブルーメンホーニッヒは、結晶化し易いので、クリーム状に加工されることが多い。


花蜜量:  豊富
花粉量:  適度
開花時期: 6月初めから9月末頃まで


☆ファセーリアホーニッヒ(Phaceliahonig)
ファセーリアブリューテンホーニッヒ(Phaceliablütenhonig)、ファセーリアホーニッヒは、ハゼリソウ科ファセリア属の一年草「ファセリア」の花蜜からなるハチミツである。

ファセリアは、ビュッシェルシェーン(Büschelschön)、ビーネンフロイント(Bienenfreund)などの異名を持つ。日本では、「アンジェリア」の名称でも呼ばれることがあり、緑肥用作物としても知られている。
開花時期が長く、蜜源が減少しがちな真夏にも、充分に花蜜を供給することができる。

色:     琥珀色
香り:    穏やかな、干し草の匂いと花の様な香り
風味:    フルーティーで軽い酸味のある風味

花蜜量:  非常に豊富
花粉量:  豊富
開花時期: 4月初めから6月下旬頃まで


☆ブッフヴァイツィエンホーニッヒ(Buchweizenhonig)
ブッフヴァイツェンブリューテンホーニッヒ(Buchweizenblütenhonig)、ブッフヴァイツェンホーニッヒは、タデ科ソバ属の一年草「ソバ」の花蜜からなるハチミツである。

ソバは、ハイデコルン(Heidekorn)、ハイデンコルン(Heidenkorn)などの異名を持つ。
その昔、ブッフヴァイツェンホーニッヒは、「レープクーヘン(Lebkuchen)」という香辛料入りの焼き菓子に好んで用いられたが、現在では、しばしば他の材料に置き換えられる。

色:     褐色から濃褐色
香り:    個性的で独特な、力強い香り
風味:    黒砂糖の様な濃い風味で、甘味と共に苦みも感じる


ブリューテンホーニッヒ・ミット・ブッフヴァイツェン ブリューテンホーニッヒ・ミット・ブッフヴァイツェン
「Blütenhonig mit Buchweizen(ブリューテンホーニッヒ・ミット・ブッフヴァイツェン」は、

ソバの単花ハチミツではなく、ソバのハチミツ入りの百花蜜である。
同時に採取されたハチミツによって、長期間液状を保ったり、短期間で結晶化したりする。


花蜜量:  豊富
花粉量:  非常に豊富
開花時期: 7月半ばから9月下旬頃まで


*養蜂を営む地域や蜜源となる植物の品種によって、開花時期は多少前後する。


例えば、ライラック(Flieder:フリーダー)やセイヨウニワトコ(Schwarzer Holunder:シュヴァルツァー・ホールンダー)の様に、花蜜の量自体は充分でも、花の形が特殊なために蜜に届かず、ミツバチにとっては利用価値のない植物もある。
この場合に、花粉媒介の役割を担うのは、マルハナバチ(Hummel:フンメル)や蝶(Schmetterling:シュメッターリング)などである。

同様に、人工的な品種改良を重ねられた、見目麗しい観賞用の花々の中にも、その形態のためにミツバチにとっては全く魅力がない場合もある。

このコラムの担当者

Kimiko Kochs

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