1. 総合情報サイトTOP
  2. 食のコラム&レシピ
  3. 12<海外>とっておきのヨーロッパだより
  4. 【とっておきのヨーロッパだより】世界遺産のブドウ畑と街を訪ねて(第2回)

【とっておきのヨーロッパだより】世界遺産のブドウ畑と街を訪ねて(第2回)
2017年08月30日

  • mixiチェック

<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>

「世界遺産のブドウ畑と街を訪ねて」シリーズ
第1回|第2回


前回のバローロとバルバレスコというワインを巡る旅に引き続き、今回は、その2つのワインを作るワイナリーのラ・スピネッタを訪問し、実際に試飲させていただいたワインをご紹介します。

ランゲ・ビアンコ Langhe Bianco 2010
ソーヴィニョン・ブラン100%で作られるワインです。
トノン、バリック、ステンレスタンクの別々のタンクで2年熟成します。最後に1つのステンレスタンクで混ぜ合わせ、瓶詰という手間のかかる白ワインです。ステンレスタンク熟成によるフレッシュ感、樽熟成による酸の角が取れたまろやかな味わいをこの1本で体験することが出来ます。
一般的なワイナリーではステンレスタンクだけや樽だけで寝かせる方法を取っているので、混ぜ合わせるという手間のかかった方法を取っている生産者は、ピエモンテで他には居ないそうです。

photo15

ソーヴィニョン・ブラン特有の柑橘系の香りはもちろんのこと、温度を上げるとライチや蜂蜜の香りもします。口に含むと香りとともにしっかりしたミネラル感が口に中に広がります。
さっぱりした前菜もピッタリですが、ホタテのポワレや脂っこいウナギなどにも合うと思います。食後酒として少し温度を上げて飲んでみたい気もしました。


バルベーラ・カ・ディ・ピアン Barbera Cà di Pian 2013
1985年にリリースされたラ・スピネッタ2番目のワインです。20以上の畑のバルベーラ・ダスティ種を混ぜて2年間熟成させて作られます。

photo16

ブルーベリーやブラックベリー、燻製香、口に含むと酸味がしっかりありながら、適度なタンニン感もあり、赤ワインですがガブガブ飲めそうな印象です。生ハム、コッパ(豚の煮凝り)レバーのパテ、ヴィテッロ・トンナート(仔牛のツナソース)などの肉の前菜にピッタリな印象を受けました。


バルベーラ・ビオンツォ Barbera Bionzo 2013
ビオンツォ Bionzoというのは単一畑(樹齢62~72年)の名前です。この畑は2つの丘の間にあり、1日中日があたっているそうです。風通しが良く、水はけがいいので味の濃いブドウが採れます。熟成期間は約2年半です。

photo17

こちらもブルーベリーやブラックベリー、燻製香があり、口に含むとまず甘みが口の中で広がり、チェリーを食べている感じです。唐辛子の様な少しピリリとした口当たりも後味に感じます。このワインには豚肉ジビエの煮込みや麻婆豆腐、辛口のゴルゴンゾーラチーズが相性抜群だと思います。


ランゲ・ネッビオーロ Langhe Nebbiolo 2014
バルバレスコ生産地の一つであるネイヴェ Neive村の中のスタルデーリ Starderi地区で採れるブドウを使用しています。熟成期間は2年2か月です。

photo18

オレンジの皮、八角や丁子などのスパイス香がまず最初に来ます。口に含むと先ほどのスパイス香が広がります。みおさんは「冷やして飲むとタンニンが軽くなって何にでも合います。特にマグロ、サーモン、アナゴといった魚介類も相性抜群です」とおっしゃっていました。


ピンPin 2012
Pinというのは創業者ジュゼッペさんのニックネームだそうです。ジュゼッペさんに敬意を表したワインだそうです。このワインだけブドウをブレンドしており、品種はネッビオーロ65%、バルベーラ35%です。
このワインのネッビオーロは、ラ・スピネッタのトップキュヴェである3種のバルバレスコに使われる畑(ガッリーナ Gallina、ヴァレイラーノ Valeirano、スタルデーリ Starderi)で採れたのものを使用、バルベーラはビオンツォで採れたものを使用しています。熟成期間は約3年です。

photo19

チェリーやドライトマト、ドライアプリコットの香りがあり、口に含むとドライプラムの凝縮した甘い香りと味が広がります。最初の口に入れた時の印象が甘いので、鴨肉のオレンジソースや照り焼き、角煮がとても合うと思います。食後のドライフルーツやチョコレートなども相性がいいと思いました。


バルバレスコ・ボルディーニ Barbaresco Bordini 2013
2006年に購入したボルディーニ Bordiniという単一畑です(樹齢29~32年)。熟成期間は約4年です。

photo20

モモや梅、白い花の爽やかな香りがありながらも、胡椒のスパイシーな香りがあり、口に含むとバニラなどの甘い香りが広がります。タンニンがしっかりあるので、胡椒をきかせた牛肉のステーキやグリル、フォアグラなどの脂がしっかりしたものにもよく合うと思います。


バルバレスコ・ガッリーナ Barbaresco Gallina 2008
1995年、ラ・スピネッタで初めてリリースしたバルバレスコ。ガッリーナ Gallinaという単一畑(樹齢50~55年)のブドウを使用し、熟成期間は約4年です。

photo21

まず、ドライプラムやチェリーのジャムの香りが鼻に広がります。口に含むと先ほどの香りが爆発したように更に広がります。味と香りの一体感がとてもよいワインです。タンニンも落ち着き、このワイン単体だけでもとても良いのですが、ゴルゴンゾーラの甘口やチョコレートといったものにとても良く合うと思います。


バローロ・カンペ Barolo Campè 2009
2000年念願のリリースを果たしたバローロ。グリンツァーネ・カヴール村のカンペ Campèという単一畑(樹齢50~55歳)のブドウを使用し、熟成期間は3年9か月です。

photo22

オレンジのマーマレードやラズベリーのジャムのような火を通した果物の香りがまずします。口に含むと先ほどの香りとキルシュ(チェリーの蒸留酒)の様な香り、そして白トリュフの香りがしました。このワインには仔牛や豚肉、鶏肉などのあっさりした肉が合うと思います。トリュフの香りがするので、キノコを使ったソースがピッタリだと思います。バルバレスコと違い、タンニンと骨格がしっかりしており、やはりワインの「王様」と言えるワインだと思いました。


モスカート・ブリッコ・クァッリャ Moscato Bricco Quaglia 2016
前述したとおり、創業時ラ・スピネッタの名を一躍有名にしたモスカートです。イタリアで初めて単一畑(樹齢34~39年)で作られたモスカートだそうで、このブリッコ・クァッリャ Bricco Quagliaという畑は丘の頂上にあります。ピエモンテ方言で丘の頂上はラ・スピネッタと言うそうで、これが社名の由来になったのだそうです。

photo23

蜂蜜、ミント、ヴェルヴェンヌ(レモンバーベナ)の香りが広がり、口に含むとリンゴの爽やかな香りが広がります。食後にはもちろん、食前にもぴったりです。気温の暑い日に外で飲みたい1杯です。


パッシート・オーロ Passito Oro 2008
パッシートとは甘口ワインの事を言います。モスカート種を遅摘みで収穫後、乾燥機で乾燥し抽出。その後、樽で7年熟成して出荷しています。

photo24

アプリコットや白い花の香りが広がります。口に含むとトロッとする甘味がありながらも柑橘系の爽やかな香りも広がります。このワインにはデザートはもちろんですが、フォアグラの料理にもぴったり合うと思います。


試飲後、ラベルの秘密について解説して頂きました。
ラ・スピネッタ社のトップキュヴェある3種類のバルバレスコとバローロは、ラベルとボトルに特徴があります。

photo25

ラベルにある「ヴルスー vürsú」という言葉はこの土地の方言で〝誰からも欲しがられる″という意味だそうです。その名にふさわしく中身のワイン同様に外側も価値のあるものにするべく、わざとボトルを重くしたり、特徴のあるラベルをつけているそうです。

バルバレスコを含む多くのラベルには、ドイツの画家アルブレヒト・デューラー Albrecht Dürerによるサイの版画が用いられていますが、ある日、2代目のジョルジオ氏がデューラーの作品を見ていた折り、この版画のサイの力強さや繊細さに引きつけられたのがきっかけだそうです。
ラ・スピネッタでもこのサイの絵ように力強く繊細なワインを作っていきたいという思いで採用されているそうです。
一方バローロのラベルには、同じくデューラーによるライオンの版画が使われています。バローロが「ワインの王様」と呼ばれている事にちなみ、百獣の王であるライオンを採用したそうです。

ラ・スピネッタが販売している4種のバルバレスコのブドウはネイヴェで栽培され、醸造所はカスタニョーレ・デッレ・ランツェにあります。バルバレスコはD.O.C.G.の規定上、原材料の栽培から製造工程の全てを限定区域(前回のコラムで紹介した4つの村)で行わないといけないのですが、醸造所がこの区域外の場所にあるため、本来であればD.O.C.G.規定に反しています。なぜ4種のバルバレスコがD.O.C.G.認定を受けたかというと、創業者のジュゼッペ氏が会社を立ち上げる前、バルバレスコを産する畑(ある生産者)で働いていた(生計を立てていた)という歴史的な事実があり、特例で定められた生産区域外での生産(D.O.C.G.認定)が認められたとのこと。これはとてもまれな出来事だそうです。バローロはグリンツァーネ・カヴールでブドウを栽培し、そこに醸造所を設けているため、D.O.C.G.認定の生産が可能となります。

同じワイナリーで規定の厳しいバローロとバルバレスコを作ることに難しさを感じたことはないか伺ってみたところ、「もともとバローロとバルバレスコ2つのワインを作る憧れがあり、その憧れが叶ったので難しいと感じたことはない」そうです。
ジュゼッペ氏は投資を恐れず、良い畑が売りに出ていると、どんどん買っていったそうです。
「良い畑を手にするといいワインも出来る」、この信念によってラ・スピネッタは大きくなっていきました。

最後に、みおさんにイタリアワインの魅力についてのお考えを伺ってみました。
「土着品種の多様性に魅力を感じます。イタリアはどこへ行ってもその土地の郷土料理が豊富です。それと同じように、ブドウの土着品種も土地によって変わり、その数は600を超えるとも言われています。その土地のお料理にとても合う美味しいワインが、いつも隣り合わせに存在するのです。」
「そして、何と言ってもイタリアワインの多く(特にピエモンテ州)はあまり品種間でのブレンドをせず、1種類の品種での勝負が王道です。ですから、そのブドウ品種の個性を最大限に引き出したワインを楽しめるところが魅力かと思います。ワインを飲みながらその土地の自然を知り、感じるとでも言いましょうか。」
「南北に長く海に囲まれ、自然豊かなこのイタリアでだからこそ生まれた豊富な土着品種のブドウで作るワインは、まさにその土地の自然の恵みといっても良いのでははいでしょうか。」

郷土愛がとてもにじみ出る回答をいただき、私たち料理人も共感できるポイントがたくさんあると感じました。

自分の土地で育てた土着品種を大切にするところや、誇りをもっておいしいワインを作る職人魂、それを伝承してどんどんいいものを作り、歴史を継承していく熱い方たちが居たお陰で「ワインの王」や「ワインの女王」が誕生し、この地域が世界遺産として認められた大きな理由なのだと、私は思いました。

photo26
出荷を待つワイン

取材の間は郷土料理を求めて様々なレストランを訪れましたが、あちこちで地元ワインとの結びつきを強く感じられる味に出会いました。ほんの一部ですがご紹介します。

「ブラザート・ディ・ヴィテッロ・アル・バローロ Brasato di vitello al Barolo」は、この地域の代表的な郷土料理と言えます。仔牛の肩肉をたっぷりのバローロワインで柔らかく煮こんだ料理です。

photo27
たっぷりのソースにはコクがあり、どこか日本のシチューを思い出させる味でした

また、トラットリアでのデザートには「ペーラ・コッタ・アッロ・シロッポ・ディ・バローロ Pera cotta allo scioroppo di barolo(洋梨のバローロ・シロップがけ)」があり、注文してみました。
洋ナシのコンポートにバローロを煮詰めたシロップがかけられています。

photo28
バローロの軽い酸味と渋みが洋ナシの甘さとマッチして美味でした

その他、滞在中は「カルネ・クルーダ Carne cruda(仔牛生肉のタルタル)」、「インサラータ・ルッサ Insalata russa(ロシア風サラダ=じゃがいもと角切り野菜のマヨネーズ和え)」、「ヴィテッロ・トンナート Vitello tonnato(仔牛ゆで肉のツナソース添え)」、「アニョロッティ・ダル・プリン Agnolotti dal plin(詰め物入りパスタ)」といった、様々に風味豊かな郷土料理を味わいました。もちろん、お供に地元ワインは必須です。

photo29
ロシア風サラダ(真ん中)、仔牛肉のタルタル(右上)

photo30 photo31
(左)仔牛のツナソース
(右)アニョロッティ・ダル・プリン

ヴィテッロ・トンナートとアニョロッティ・ダル・プリンには仔牛肉が使われており、タンニンが穏やかなバルバレスコとの相性は抜群です。
普段であれば、レストランでの食事の1品目に合わせるワインは白を頼みがちですが、バルベーラやネッビオーロの赤ワインは軽く、果実味が豊かなので、コース料理を赤ワインで通すことも出来ました。その土地の料理にはその土地のワインがやはり合うということを再認識しました。

今回、世界遺産のブドウ畑を周り、そこで作られている素晴らしいワインを味わう機会を持ちましたが、バローロ、バルバレスコは決して単に世界遺産として無条件に持ち上げられている土地という訳ではなく、質の高いワインを作るためにたくさんの人から人へ受け継がれてきた土地である事を実感しました。
見えない努力や功績を継承し、それをこれから良くしていこうという気持ち、挑戦がこの地域には根付いていると思いました。
まだまだ奥が深いピエモンテのワイン畑と街。そして自信と誇りを持ってワインを作る生産者の情熱。おいしい郷土料理。魅力がいっぱい詰まったこの場所が一層好きになりました。



<取材協力先>
Osteria Pizzeria Per Bacco
住所: Via Roma 30, La Morra
TEL: +39 (0)173 50609
HP: http://www.pizzeriaperbacco.com/

Osteria del Boccondivino
住所: Via Mendicità Istruita, 14, 12042 Bra CN
TEL: +39 (0)172 425674
HP: http://www.boccondivinoslow.it/boccodivino/ita/osteria.asp

Ape Wine Bar
住所: Via Mons M. Geroluno Vida, 2A, 12051 Alba CN
TEL: +39 (0)141 844218
HP: http://www.apewinebar.it/

このコラムの担当者

谷岡 敬太

バックナンバー

2009年8月まではこちら
2009年9月からはこちら

カテゴリ

最近の投稿

過去の記事

ページの上部へ戻る