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【とっておきのヨーロッパだより】これがおいしい!バルセロナ ~米編~
2013年05月01日

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<【とっておきのヨーロッパだより】ってどんなコラム?>

 

「これがおいしい!バルセロナ」シリーズ
第1回 ドリンク編①第2回 ドリンク編②|第3回 米編|第4回 市場&野菜編第5回 魚介類編

 


 

スペインでありながら独自のアイデンティティを守り続けるカタルーニャ地方。この「これが美味しい!バルセロナ」シリーズでは、そんなカタルーニャの中心都市バルセロナをクローズアップし、私自身がカタルーニャ人との交流のなかで知ったバルセロナならではの食文化の魅力と、おいしくて少し珍しいお店を紹介しています。今回は日本人も大好きな「米編」です!
なお、カタルーニャ人に密着したレポートということで、本文中のアルファベット表記はすべて普段彼らが話しているときの呼び方、カタルーニャ語になっていますので、ぜひ皆さんの知っている言語と比較してみてください。


■ヨーロッパの主要米生産国
お米が主食の国といえばやはり「ニッポン!」というのが私たち日本人ですが、実はヨーロッパではイタリア、スペインでも米は日常的に食されています。現にスペインはヨーロッパではイタリアに次いで2番目の米の生産国です。

まずは、スペインで生産される米について少し触れておきます。スペインの2011‐12年の総生産量は92万9千9百トン、そのおよそ半分が長粒のインディカ米で、残りの半分が丸粒のジャポニカ米です。インディカ米はその大部分が輸出用で、主に国内で消費されているのはジャポニカ米です。カタルーニャ地方における米の年間収穫量は12万8百トンで、その大部分が「デルタ・ダ・レブラ Delta de l’Ebre(エブラ三角州)」で生産されています。(注1)
スペイン北部のカンタブリア山脈を水源に、イベリア半島をうねるように縦断しながら地中海に流れつくエブラ川 Ebreは、カタルーニャの南端タラゴナ県で地中海に注ぎ、その河口に肥沃な土壌を作り出します。それが西ヨーロッパで最も大きい湿地帯の一つであり、カタルーニャが誇る穀倉地帯エブラ三角州です。その総面積は320平方キロメートルに及び、一帯に様々な生態系を形成しています。その貴重な自然を守るべく、1985年、カタルーニャ自治政府によってこのデルタ地帯の正式な保護政策が開始しました。
スペイン全土で収穫される米の約13%がここで生産され、約2万1千ヘクタールの水田で収穫される米は「デー・オー・ペー D.O.P.」(注2)、つまり「デノミナシオ・ダリジェン・プロテジダ・アロス・ダル・デルタ・ダ・レブラ Denominació d’Origen Protegida Arròs del Delta de l’Ebre(エブラ三角州原産地名称保護)」によりその品質が厳しく管理されています。ここではジャポニカ米のなかでも「バイア種 Bahia」「テブラ種 Tebre」「セニャ種 Sénia」「フォンザ種 Fonsa」「ボンバ種 Bomba」「モンシアネル種 Montsianell」の6品種のみがこれに認められています。(注3)

ボンバ米。日本風の白米として炊くには粘着度が少ない
ボンバ米。日本風の白米として炊くには粘着度が少ない

ちなみに、百貨店からスーパー、高級食材店までお米を販売している商店をたくさん見て回りましたが、ボンバ種以外のエブラD.O.C.の商品は見つけることができませんでした。もしかするとブレンド米として使用されているのか、生産量はごく少ないのかも知れません。
また、ボンバ種のなかでも、“エクストラ EXTRA”として販売されている商品があります。これは粒の壊れていないパーセンテージが高いことを保証するものだそうですが、見た目は通常のものとほとんど変わらないように見えます。ただ、実際に炊き比べてみると、確かに“エクストラ”のほうが通常のボンバ種よりも粒の崩れが少なく、調理後も口の中にしっかりと粒が残ります。日本人の私にとっては、白米として食べるのにはあまり好ましくない印象でしたが、パエリアなどの米料理には、吸水性が高くて味が入りやすく、それでいて型くずれしない“エクストラ”くらい存在感のある米のほうがやはり向いているような気がしました。

百貨店でみかけたもの。メーカーは違うがすべてボンバ米 D.O.C.に認められたものにはこのマークがついている
(左)百貨店でみかけたもの。メーカーは違うがすべてボンバ米
(右)D.O.C.に認められたものにはこのマークがついている

考えてみれば、一般によく知られているスペイン料理の代表格は、米料理の「パエリア」ではないでしょうか?
カタルーニャ語では「パエィヤ」と発音します。実は日本で一般に知られているオレンジ色のパエィヤは「パエィヤ・バレンシアナ Paella Valenciana」で、本来は鶏肉とウサギ肉を基本としたバレンシア地方発祥のもの。バルセロナでは観光地以外あまり見かけることはありません。それどころか、バルセロナのレストランで意気揚々とパエィヤを注文すると、いつの間にか別の米料理を勧められて「あれ?」という料理が出てくることがあります。オレンジ色のパラパラした米に魚介がたくさん入っているパエィヤではなく、日本の「雑炊」のような水分量の薄茶色の米料理。もしそんな料理に出会ったなら、それはカタルーニャの代表的な米料理「アロス・カルドス・カタラ Arròs caldós català」かもしれません。いわばカタルーニャ風雑炊といったところでしょうか。思っていたパエィヤとはちがっても、きっと雑炊になじみのある日本人の口には、ものすごく合う郷土料理のはずです。
そのほか、カタルーニャでパエィヤといえば、米所である「デルタ・ダ・レブラ Delta de l’Ebre(エブラ三角州)」の名物「パエィヤ・ダル・デルタ Paella del Delta(三角州風パエィヤ)」が有名で、これは鶏、ウサギだけでなく、さらに豚、海老、カニ、カタツムリが入ったまさに山海の幸をふんだんに使った豪勢な一品。このようにスペインでは様々な地域で、さまざまな米料理が食されています。

「アロス・カルドス・カタラ」はまさしく雑炊のよう 一般家庭で作ってもらった海鮮パエィヤ
(左)「アロス・カルドス・カタラ」はまさしく雑炊のよう
(右)一般家庭で作ってもらった海鮮パエィヤ


■バルセロナのアロセリア Arrosseria
ところで、バルセロナには「アロセリア Arroseria」と呼ばれる、米料理を専門にしたレストランがあります。さすがに専門店だけあってその米料理のおいしさとヴァリエーションは、一般的なスペイン料理店で食べる米料理とは一線を隔しています。

バレンシア地方の町の名前を冠したアロセリア『シャヴィタ』。団体客用のホールも別にある バレンシア地方の町の名前を冠したアロセリア『シャヴィタ』。
バレンシア地方の町の名前を冠したアロセリア『シャヴィタ』。団体客用のホールも別にある

一般的に「アロセリア」のメニューにあるのは、大きく分けて「パエィヤ Paella」、「アロス・カルドス Arròs caldós(雑炊)」、「アロス・メロソ Arròs Meloso(パエィヤと雑炊の中間程度の水分量の米料理、おじややリゾットに近い食感のもの)」の3つ。それぞれのスタイルで具の違う料理がいくつも用意されています。また、米でなく、短いパスタを使用したパエィヤのような「フィデワダ Fideuada」と呼ばれる料理(スペイン語ではフィデウア)も定番です。さらに店によっては、それに加えて世界の米料理を扱っているところもあります。

アンコウの大きな身が入ったパエィヤ 米のかわりにパスタを使用した魚介のフィデワダ
(左)アンコウの大きな身が入ったパエィヤ
(右)米のかわりにパスタを使用した魚介のフィデワダ

ちなみにこうした米料理はランチで食べるのが習慣で、バルセロナでは地元の人はディナーではほとんど注文しません。どの料理も調理に20分程度必要とするため、どのタイプの米料理か決めたら、同時にいくつかの軽いおつまみ的な料理を頼むのが一般的。例えば、イカナゴなどその日水揚げされた地中海の魚フリッター、エスカラ Escala産のアンチョビ、アル・プラッ El Prat特産アーティチョークのチップスなど、地元の新鮮な食材を軽く調理したようなものがあれば、あまり重くもなく次にくる米料理までのつなぎとして適しているかもしれません。

米料理が出るまでに食べたアーティチョークのフライ この店ではサーヴィスマンが鍋から取り分けてくれる
(左)米料理が出るまでに食べたアーティチョークのフライ
(右)この店ではサーヴィスマンが鍋から取り分けてくれる


また、「アロセリア」ではほとんどの場合、パエィヤならパエィヤ鍋ごと、カタルーニャ風雑炊なら雑炊鍋ごと、出来たてを店員がテーブルに運び、客に披露してから皿に取り分けてくれます。店によっては、あえて皿には盛りつけずにテーブルの真ん中に鍋を置き、各自が木製のスプーンで鍋から直接すくって口へ運ぶ家庭的な食べ方を勧めるところもありますが、確かにパエィヤの場合は鍋の底の「スカラッ Socarrat(おこげ)」が特においしいので、皆でわいわい取り合いをしながら食べるのも楽しいかもしれませんね。
バルセロナでパエィヤを食べるなら、ぜひ「アロセリア」に足を運んでほしいと思います。

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取材協力店:
 L’ARROSERIA XÀVITA LES CORTS
 Carrer de Bordeus, 35 BARCELONA 08029, Spain

(注1)参照:スペイン農業食糧環境省
http://www.magrama.gob.es/es/agricultura/temas/producciones-agricolas/cultivos-herbaceos/arroz/#para2

(注2)農産物および食品に適用される原産地呼称制度のこと。特定の地域において、指定された伝統的な製法を維持し生産したものにのみこの呼称が認められます。その生産物固有の特性と安定した品質を消費者に保証するとともに、特定の食品、また生産者を法的に保護するものでもあります。スペイン農業食糧環境省では以下のように定義しています。
・ 特定の場所、地域(または例外的に国)で生産され、
・その品質や特性が本質的にまたは排他的に、その土地固有の自然と人の手によって生み出されるものであり、
・すべての生産工程が特定の地理的領域で行われていること

(注3)エブラ6品種のそれぞれの特徴は以下のとおり。
Bahia種: 稲丈100~110cm、米粒の長径6~7mm(中粒)、縦横の長さの差2~2.4mm(楕円形)
Tebre種: エブラ三角州で作出された品種。稲竹80~85cm、米粒の長兄5~6mm(中粒)、縦横の長さの差2mm以下(球形)
Sénia種: バレンシアで作出された品種。稲丈90~95cm、米粒の長径5~6mm(中粒)、縦横の長さの差2mm以下(球形)
Fonsa種: エブラ三角州で作出された品種。米粒の長兄5~6mm(中粒)、縦横の長さの差2mm以下(球形)
Bomba種: 稲丈100~130cm、米粒の長兄約5mm(短粒)、縦横の長さの差1.9~2.2mm(球形)
Montsianell種: 稲丈79~89cm、米粒の長径5~6mm(中粒)、縦横の長さの差2mm以下(球形)
 【参照】エブラ三角州原産地名称保護: http://www.do-deltadelebre.com/site/?mod=variety

スペインに関するコラム「風土Foodエスパーニャ」
http://www.tsujicho.com/oishii/recipe/w_food/espana/index.html
も参照下さい。

このコラムの担当者

佐藤重文

このコラムのレシピ

2009年8月まではこちら
2009年9月からはこちら

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