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毎日新聞連載 -美食地質学入門- 第40講「カキ」

新聞
美食地質学入門

2021.11.03

11月2日(火)の毎日新聞(夕刊)に美食地質学入門が掲載されました。

テーマ食材はカキ


第18講で能登の岩ガキを取り上げましたが、日本で主に食用にされるのはマガキです。

マカキも、種苗の改良や生産方法に工夫を行うことで、各地でブランド化が進んでいます。
たとえば、他の魚介類と同様に3倍体の種苗を作ることで、産卵期の夏でも楽しめるマガキとして出荷している産地があります。

また、殻付きで提供する際に求められる美しい形の殻をつくるため、通常はすずなりにくっついて収穫されるカキを1つずつバラバラに成長させ、厚みのある形の整ったものを生産している産地もあります。

衛生面においても生産から流通の各段階での取り組みが行われており、安全面をアピールしている産地もあります。
カキはプランクトンをたくさん食べて育つため、海水をたくさんろ過してくれる(1日にバスタブ1杯(300~400L)分の水を浄化)ので海水はきれいになりますが、逆に言えば有害なものがたくさん体内に蓄積する可能性もあります。
ということは、常に食中毒の危険がつきまとうということになります。
原因となるのは種々の細菌、ウイルスなどで、貝毒、ノロウイルスなどが問題となります。
そのため産地では検査を実施して、貝毒については発生時に出荷停止の措置をとったり、ノロウイルスなどについては殺菌海水の中に入れることで体内の海水を循環させて細菌などを排出させたり、安全性を確認できるように採れた海域を表示したりと流通前にさまざまな対策を行っています。

圧倒的にマガキの生産が多いのですが、他にシカメガキ、スミノエガキ、イタボガキなどが一部の地域で食されています。
中でもシカメガキは「熊本オイスター」の名で知られ、海外での評価が高いこともあり、日本でも養殖が行われています。
その際、天然分布しているマガキとシカメガキは外観ではほとんど区別できないため、今やおなじみのPCR法で遺伝子検査を行うことで、シカメガキの親貝を選別して採卵させることから始めているそうです。

主産地には広島県、宮城県などがあげられますが、今回は宮城県南三陸町戸倉地区のASC認証「戸倉っこかき」(とぐらっこかき)です。



震災から10年、あえて減産を選択することで成長スピードが上がり、商品の価値を高めることにも成功しました。
また、日本で初めて養殖版の海のエコラベル・ASC認証を受けました。
これは、海の自然や資源を守って獲られた持続可能な水産物(シーフード)を水産養殖管理協議会(ASC)が認証しエコラベルをつける、という国際的な海洋保全活動の取り組みです。

さて、本題の巽先生のお話は新聞紙上及び毎日新聞ホームページをご確認ください。

料理担当は、辻調理師専門学校・日本料理の音部暖菜先生です。



音部;砂に潜るアサリやハマグリ、岩の上を移動するサザエ、貝殻を開け閉めして泳ぐため貝柱が発達したホタテなどに対して、牡蠣は移動しないため筋肉が退化し、貝類の中ではめずらしく発達した柔らかい内蔵をメインに食べる食材です。
そこで何品か召し上がっていただくなら、火の入れ方や調理法を変えることにより食感の違いを出すことが大切だと思いました。
料亭では牡蠣をメインにしたコース料理が出ることは少ないと思いますが、もしお出しするなら...と考えてメニューを構成しました。
盛り付けは掲載の時期に合わせて紅葉狩りをイメージしています。




▲三種盛り合わせ


▲牡蠣ジュレかけ

音部;加熱することで独特の磯の匂いを抑え、甘味を引き出すために酒と塩を加えた昆布出しで表面を短時間過熱し、余熱で中まで火を通すことで外側のプリッとした食感と内側のトロっと溶ける食感を出すように心がけました。
ジュレは穏やかな酸味をくわえ、食べる直前にスダチを絞ることで柑橘のさわやかな香りを楽しんでいただく趣向です。


▲牡蠣フライ
音部;牡蠣といえば・・と言われるくらい好きな方が多い料理ではないでしょうか。衣をつけることで油の中で蒸し焼きの状態になります。
また、衣がうまみを閉じ込める役割とサクッとした食感を生み出しますので、料理にメリハリが出てきます。
通常はピクルスを使用しますが、柴漬けやらっきょうを入れることで一味違う和風のタルタルソースを添えて。


▲牡蠣の旨煮の燻製
音部;牡蠣の過熱時間を少し長くすることでプリッとした食感と肉質感が出てきます。
有馬山椒を加えた煮汁で煮て軽く燻製することで、香りの変化を楽しんでいただく料理です。
卵黄の味噌漬けを添えることでお酒に合う1品に。


▲牡蠣真薯
音部;真薯は粗く刻んだ牡蠣をすり身に加えることで柔らかさの中にも食感の変化を生みだす1層目、牡蠣をペーストにして加えることで豊富に含まれる旨味をより味わうことのできる2層目と、2種を組み合わせることにより牡蠣の良さを最大限に生かしたお椀です。
真薯が柔らかいので、椀種としては食感のあるハタケシメジと相性の良い芹、秋らしく紅葉人参を添えました。吸口には黄柚子を使うことで一気に晩秋に心が引き寄せられると思います。
お酒を飲んだ体に優しい一品として。


▲牡蠣田楽
音部;牡蠣は土手鍋に代表されるように味噌と相性の良い食材です。赤味噌では少し強すぎると感じましたので今回は白味噌を使用しています。
田楽味噌の中にすり下ろした柚子をたっぷりと加えてかおり高くし、少し焼き色を付けることで香ばしさを出しています。
牡蠣は7割ほど加熱した後に味噌をのせて焼きあげ、召し上がっていただくころに余熱で丁度良い火通しになるように心がけました。
季節の銀杏と栗、口直しに茗荷の甘酢漬けをそえて。

合わせるお酒は、福島県の大七酒造株式会社「純米生酛」。


伝統的な醸造法である「生酛造り」一筋に、豊潤な美酒を醸し続けてきたという大七酒造。

このお酒を十分に味わうため、冷酒からお燗へと変え、カキの旨みとの相乗効果を楽しんでいただきました。

次回12月のテーマはゴボウ
どうぞお楽しみに。