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毎日新聞連載 -美食地質学入門- 第48講「ラッキョウ」

新聞
美食地質学入門

2022.07.06

7月5日(火)の毎日新聞(夕刊)に「美食地質学入門」が掲載されました。

テーマ食材はラッキョウ


生のラッキョウを見かけるのは初夏の一時期で、季節感のある野菜です。
とはいえ、最近では家庭で酢漬けにする方は少ないのではないでしょうか。

まずはラッキョウの基本情報から。
主な産地には鹿児島県、宮崎県などがありますが、今回は鳥取県の砂丘で育つラッキョウです。
品種の数は少なく、主流は大玉の「らくだ」。
他には、玉らっきょう、八房(やつふさ)、九頭竜(くずりゅう)があります。


栽培については、夏8月ごろに植え付け、翌年5月~6月に収穫します。
収穫時期は地上の葉が枯れて夏季の休眠に入る前にあたります。
本来は暑さにはあまり強くないらっきょうは夏に休眠をしますが、その前に収穫して食用にします。
もう1年そのまま育てる産地もありますが、どんどん分球していき小粒になりすぎることから「鳥取砂丘らっきょう」は1年で収穫するそうです。

砂地は水分も栄養分も下方にどんどん通り抜けてしまうので、栄養分や水分の少ない過酷な環境となってしまいます。
ラッキョウはその中でも生き抜く脅威の生命力を持ち合わせています。
そのおかげで芯部の生育が充実し、鱗片が薄く何重にも重なって、締まりが良く繊維が詰まった実が形成されます。
これが「鳥取砂丘らっきょう」のシャキシャキとした食感を生み出します。

ラッキョウは玉葱などと同様、りん茎(けい)を食用にする野菜です。
りん茎は葉の根元が肥大したもので、りん片が何層にも重なって出来ており、この層の出来具合が食感に大きな影響を与えるとのことです。
すなわち、かみ始め(外側のりん片)とかみ終わり(内側のりん片)の硬さが同じになった時に歯切れの良さを感じるそうです。


出荷の形態は主に以下の2種類で、
「洗い」 ・・・根と茎の部分を切り落とし皮をむいて、芽が出ないよう塩水で洗って処理されたもののこと
「根付・泥付」・・・葉と根の長い部分を切り落とした状態
他には、らっきょうの若採りしたものが「エシャレット」の商品名で流通しています。

真夏の浜辺の砂の熱さは海水浴などの経験から想像していただけると思いますが、掘取り機の導入で収穫作業の一部は軽減されたとは言え、夏の暑さの中での植え付け作業と「洗いらっきょう」への加工は今だに手作業で、人の労働もラッキョウたち以上に過酷です。



ラッキョウの糖度はメロンの2倍の30度以上、この糖は加熱することで甘みに変わります。

そこで今日は様々に加熱した料理も登場します。

さて対談の様子は新聞紙上及び毎日新聞ホームページをご確認ください。

料理担当は、辻調理師専門学校・日本料理の山本先生です。

山本;らっきょうと言えばお馴染みの酢漬けにしたものが代表です。
今回はそのらっきょうを煮る、焼く、揚げるなどの方法で火を通し、それぞれの味や食感の違いを楽しんでいただきます。


▲らっきょう黄身酢掛け
山本;酢漬けらっきょう、プチトマト、胡瓜、帆立貝柱を盛り、上から黄身酢をかけました。


▲冷やし茶碗蒸し
山本;出し汁で柔らかく炊いたらっきょうを入れたシンプルな茶碗蒸しです。
冷たく冷やした茶碗蒸しを召し上がってください。


▲八寸
山本;
・「南蛮漬け」...らっきょうをフライパンで焼き、香ばしさを付け南蛮酢に漬けこみました。通常の酢漬けと違う酸味を楽しんでください。
・「鯛棒ずし らっきょう入り」...シャリの中に酢漬けらっきょうのみじん切りを混ぜ込みました。煎り胡麻と紫蘇を加える事でらっきょうの味がやわらぎました。
・「黄身焼き」...すり身に炒めたらっきょうを混ぜ込み、海老に塗り焼きました。
・「らっきょう入り玉子焼き」...油で炒めたらっきょうを生地の中に入れて焼き上げました。
・「サーモン巻き」...酢漬けらっきょうをスモークサーモンで巻きました。らっきょうの食感と燻製の香りを楽しんでください。
・「ゼリー寄せ」...だし汁で柔らかく炊いたらっきょうと海苔、オクラをゼリーで固めました。らっきょうと以外に合う磯の香りのバランスを楽しんでください。
・「焼きパプリカ らっきょう味噌」...細かく切ったらっきょうを炒め、田楽味噌に混ぜ込みました。焼いたパプリカに田楽味噌を挟み召し上がって頂きます。
・「変わり揚げ.」..らっきょうは見た目と違い火が通りにくく、揚げて火を通すとホクホクした触感に驚きました。色々な衣で香りと共に楽しんでください。

▲らっきょう柳川煮
山本;らっきょうと生麩、乾燥麩、牛蒡を使用しました。一つの鍋の中で色々な食感を楽しんでください。

▲らっきょう汁
山本;柔らかく煮たらっきょうを裏漉したものをだし汁で調整し吸地としました。ほんのりと香る胡麻の風味と一緒に楽しんでください。

合わせるお酒は、大谷酒造株式会社さんの鷹勇(たかいさみ)強力、純米無濾過生原酒です。
これはいつもお世話になっている三井酒店さんの特注限定品です。

飲み方は冷酒で生酒で呑み、次はロックグラスで1/3ほど入れて一口5回ほど回して空気に触れてから一口、その後錫で燗付けと変化を楽しみました。

次回8月のテーマは「そうめん」

どうぞお楽しみに。